沖縄のいま

桜井国俊:翁長知事に埋立承認の即時撤回を求める

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〈安倍政権が辺野古新基地建設の埋め立て土砂投入を開始するという8月17日を目前に、新基地建設に反対する市民らが翁長知事に埋立承認の即時撤回を求め、15日から沖縄県庁前の県民広場で座り込みをはじめた。主催は「嘉手納ピースアクション」、「うるま市具志川9条の会」、「核兵器から命を守る県民共闘会議」。16日は、桜井国俊・沖縄大学名誉教授と本田博利・元愛媛大学教授の2人の専門家が講演した。そのポイントを順次、紹介する〉

桜井国俊・沖縄大学名誉教授の講演

翁長知事は公約として「任期中に必ず撤回する」といっているが、それを今か今かと待ちわびている。沖縄防衛局に対する聴聞(防衛局の弁明をきく)もあるので、今週20日(金)までに撤回しないと土砂投入に間に合わない。ぎりぎりのところに来ている。

〈撮影・平井茂〉

8月17日の土砂投入には県内の土砂を使うので、県の土砂条例は適用できない。

仲井眞前知事の埋立承認には5項目の留意事項〈条件)があり、それに違反しているとなれば承認権者の県知事は撤回できる。

いま撤回しなければ大浦湾の海は取り返しがつかない。いま入っているのは護岸の石材、まだ撤去可能だ。しかし、8月17日に土砂が入れば、撤去不可能になる。訴えの利益がない、裁判が成り立たないということになる。その瀬戸際にきている。

辺野古・大浦湾の海は絶滅危惧種262種を含む5334種以上の生き物が暮らしている。世界遺産の知床を上回る生き物が暮らしているが、土砂投入で全ての生き物が埋め殺される。そのような事態を許すわけにはいかない。

県は免許・承認権者。すべての権限を知事が握っている。その権限は民間同様、国をも縛っているというのが広島高裁判決。埋立が違法となった場合、国も原状回復の責務があるとしている。海を守るためにも、8月17日に土砂を投入されては困る。そういう局面にきている。

12の県から土砂が運ばれようとした時、県はチェックできるのか。

辺野古土砂全協(「辺野古土砂搬出反対」全国連絡協議会)の協力は、辺野古・大浦湾を守る闘いできわめて重要だ。搬出元の自治体に働きかけている。

12の自治体から土砂が運ばれようとした時、沖縄県だけでは対処できない。搬出元の自治体と協力しなければならない。沖縄への土砂の搬入を阻止することが大事になってくる。

特定外来生物の入りだけでなく、出もコントロールする必要がある。他県の協力を得るためには沖縄県がイニシアティブをとらなければならない。届け出制を許可制にするなど土砂条例の改正が必要だ。われわれが背中を押し、全県議に頑張ってもらおう。

公有水面埋立法32条1項は、民間に対して、埋め立て免許の際の条件に反したら取り消せると書いてある。32条第1項2号は、国にも適用できるというのが広島高裁判決だ。

仲井真埋め立て承認の時、留意事項を5点付けた。これが埋め立て承認の条件だ。該当するのは3点。

①工事の施行について実施設計について事前に県と協議を行うこと。8月17日に国は辺野古側を埋め立てようとしているが、当初の案は大浦湾側だった。大浦湾側は難しいというので、埋め立て順序を変更して辺野古側から埋め立てる。これは埋め立て順序の変更だ。しかし、実施設計について事前に県と協議を行うことをやっていない。

②環境保全対策。つい先日、県はサンゴの採捕許可を出した。サンゴの移植、海草の移植はうまくいくはずがない。サンゴも、学者は暑い時期、産卵の時期はだめだといっている。生き延びた事例は1例もない。8万群体の移植が必要だが、できっこない。この環境保全ができているのか。

現在、県が考えている撤回の事由は3点。

1つは、環境保全は不備だ。移植すればいいわけでない。あと1つ。ケーソン護岸の下の地盤はずぶずぶだ。「マヨネーズ」と表現されている。ケーソン護岸の設計図がまだ出ていない。

辺野古・大浦湾の海をかきまぜる。環境保全しながら、ずぶずぶの土壌を入れ替えてどうつくる。県は、ケーソン護岸について、あそこの設計変更はどうするか、まだ説明を聞いていないので協議しようと。工事はやめてほしいと、県は沖縄防衛局に繰り返し通知を出している。

〈撮影・平井茂〉

撤回する違法の事由は10本の指に余る。

実施設計と環境保全対策の事前協議が終わっていない。そのまま工事を強行している。サンゴを移植する、海草を移植すると言っている。それがまだやられていない。移植が成功した事例はないというのが専門家の意見だ。海草、サンゴの移植も、環境保全の施策にはなりえない。

新基地埋立の順序の変更は重大な違反だ。辺野古直下には、活断層が存在する可能性が指摘されている。さらにケーソン護岸下の超軟弱地盤の問題もある。

それに加えて、新基地周辺の高さ制限の超過問題も出てきた。高さ制限55メートル。日米地位協定で日本の航空関連法は適用されず、アメリカの基準。沖縄電力の鉄塔だけはわれわれの税金で移設するというが、沖縄高専、久辺中学校、そして辺野古の弾薬庫も高さ制限を超えている。そもそも基地が作れるのか。われわれの命はどうでもよいというダブルスタンダードは認めるわけにはいかない。

県はただちに埋め立て承認を撤回すべきだ。県は私の知っている限りで、12通の通知を沖縄防衛局に送っている。留意事項違反があると指摘して、工事を中止して留意事項の順守を求めている。撤回の機は熟している。直ちに聴聞の開始を。聴聞に4週間はかかる。そこから逆算して4週間前の金曜日は目の前だ。いま直ちに埋め立て承認の撤回の意向を知事は示すべきだ。

国はなにを考えているのか。工事を強行し、既成事実を積み重ね、県民のあきらめを誘うことだ。しかし、この工事はとん挫する。最大の根拠は、あそこの軟弱地盤だ。その上にケーソン護岸、とんでもない工事だ。まだ、設計図も出せていない。

22タイプの護岸中17タイプしか設計図を出せていないが、県は承認していない。残りの5タイプは設計図が出ていない。それがケーソン護岸だ。

県は22タイプ全部揃えて出してもらわないと、環境保全措置ができるかどうかわからないといっている。国にとっても頭が痛い。あそこの環境を破壊しないで、辺野古・大浦湾の海をかきまぜないでできるかどうかは大クエスチョンマークだ。

この難題を国は県知事選まで先送りしている。県知事をとってしまえば勝だと思っている。イエスマンを知事にすれば、すべて解決すると思っている。これを絶対に許してはならない。

われわれの不退転の決意でみんなの力を結集して辺野古新基地を阻止しようではありませんか。

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