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星英雄:渡具知名護市長は、市民の共有財産である市有地を市長の義兄関連会社に1億3000万円も安く売り飛ばした理由を、なぜ説明できないのか

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渡具知市長はなぜ、名護市民に説明しないのか。名護市民の共有財産である市有地・消防署等跡地を1億3000万円も安く、渡具知市長が売り飛ばした相手は義兄の関連会社だった。その理由を、いまだに説明できずにいる。1億3000万円は名護市の損失である。1億3000万円あれば、1世帯あたり4100円の減税が可能になる。日本国憲法が国民主権を定めているように、名護市政の主人公は名護市民だ。渡具知市長は名護市民に説明する責任がある。

市民による住民訴訟が起きていることを理由に、名護市は「取材に応じられない」と言う。訴訟は、名護市民15人が渡具知名護市長らに約1億3000万円の支払いなどを求めて2022年2月に起こした。名護市の住民全体の利益を保護することを目的としている。

名護市は口を閉ざすので、名護市情報公開条例に基づき関連資料を請求したところ、A4用紙170枚を超える資料が届いた。しかし資料を読んでも、なぜ市有地を1億3000万円も安く渡具知市長の義兄関連会社に売り飛ばしたか、市民にとってどんな利益があるのか、肝心なことは何1つ記されていない。

なぜ1億3000万円も安く消防署等跡地を市長の義兄関連会社に売り飛ばしたのか、主権者・市民に対する説明はどこにもない。やましさがないなら、名護市民に対し、堂々と説明すべきではないか。

問題の土地は旧名護消防本庁舎・消防訓練塔跡地、およそ5000平方メートル。国道58号線沿い、市役所に近い1等地である。名護市は2018年(平成30年)11月、公募型プロポーザル実施要項を公表して事業者を募集した。

プロポーザル実施要項には「新たなまちの賑わいの創出に寄与する宿泊施設又は宿泊施設及び商業施設を設置するため」事業者を募集する。「事業者の選定に当たっては、事業の提案内容及び買受希望価格から総合的に判断し、最も優れた提案を行った事業者に消防跡地を売却することといたします」とある。

驚くことに、「事業計画」に80点、跡地の「買受希望価格」に20点を配分し、評価することになっている。名護市民の共有財産・消防署等跡地の価格より事業計画に4倍の点数を与えるのが、名護市の評価の仕組みだ。

応募した5者のなかから、大和ハウス工業・アベストコーポレーション共同企業体(大和ハウスJV)、ピース企画、A社の3者が2次審査に進み、大和ハウスJVが事業者に選ばれた。

市有地の買い取り額として最高値を提示したのはピース企画、5億5268万円だった。大和ハウスJVは4億2000万円、その差は1億3000万円も、あったのだ。

問題は、名護市と名護市民が1億3000万円の損失をしても、それを上回るメリットが大和ハウスJVの「事業提案」にあったのか。そのことを明らかにすることだ。

簡単なことではないか。大和ハウスJVに決定したのが正当ならば、市民の損失1億3000万円を上回るメリットがあったと、名護市民に具体的に説明すればよい。挙証責任は渡具知市長の側にあるのだ。

ところが、いまだに渡具知市長は名護市民に対して説明できないでいる。そのことが何を意味するのか。

はじめから、義兄の関連会社に市有地・消防署等跡地を売却するつもりだったに違いない。しかも、1億3000万円も安く。議会を欺いて。

大和ハウスの当初の「事業スキーム説明書」には「名護市の企業として実績のあるホクセイが定期建物賃貸借契約方式による事業運営をいたします」とあったが、議会に提出された大和ハウスの「事業スキーム説明書」には、「名護市に所在とする新設法人を設立し、定期建物賃貸借契約方式による事業運営をいたします」となっていた。文書の改ざんである。

そのうえ、議会の議決なしに土地の所有権は有限会社サーバントに移されていたのだ。ホクセイもサーバントも渡具知市長の実の姉の夫が常務執行役員の丸政工務店の子会社である。丸政工務店は、辺野古新基地建設の埋め立て土砂を運ぶ輸送業者である。サーバントはペーパーカンパニーだ。

名護市の公募型プロポーザル選定委員会は、委員長が名護市の副市長、その他の委員は地域政策部部長、総務部部長、商工観光局局長、建設部部長、環境水道部部長の5人の市幹部とに名護市商工会会長、名護市観光教会理事長を加えた8人で構成。いずれも名護市長の息のかかった人物ばかりである。

名護市の「公募型プロポーザル」は他の地方自治体のそれと比べても、きわめて特異なものである。

公募型プロポーザルは随意契約の1種なので、渡具知市長の意のままに契約できる方式である。しかし、随意契約だからといって市民の共有財産を好き勝手に処分できるわけではない。そもそも地方自治法は、随意契約は例外と定めている。なぜなら、自治体住民の共有財産を競争入札にかけ、自治体住民にとって有利な価格で処分することが求められているからだ

埼玉県川越市の「随意契約ガイドライン」は「最低価格者以外の者を採用することがある場合には、その理由を明確にしておくことが必要である」と言う。

ユネスコ世界文化遺産の富岡製糸場で知られる群馬県富岡市の「随意契約ガイドライン」はズバリ、最高値の見積をした業者と契約すると主張する。「随意契約による場合でも、競争性の理念に基づき、できる限り多くの者から(2者以上)見積書を徴して、最も有利な価格で見積りをした者を契約の相手方とすること」(富岡市随意契約ガイドライン)

市民の共有財産は、随意契約の場合でも、できる限り高値で売るのが市長の務めなのだ。

随意契約の一種である「公募型プロポーザル」が住民全体の利益を保護するためは、公正性、透明性をもたらすことが重要だ。そのため、どの自治体も「公募型プロポーザル」に厳しい制約を課している。

徳島市は、職員以外の学識経験者を委員数の2分の1以上にすべきだとこう言う。「委員構成については、当該業務に関連する職員のほか、公正性や透明性を確保するため、原則として、学識経験者等本市職員以外の者を委員とし、委員数の2分の1以上を採用する」(「徳島市プロポーザル方式の実施に関するガイドライン」)

京都府は
「京都府公募型プロポーザル方式事務マニュアル」を定め、こう言う。「プロポーザル方式における企画提案書等の評価の専門性、公平性、透明性を確保するために、案件ごとに意見聴取要領を定めた上で、複数の外部有識者から意見を聴取する

さらに、京都府の「公募型プロポーザル方式事務マニュアル」は言う。「公募型プロポーザル方式が適切に運用されているかを確認するため、執行状況及び抽出案件について、第三者の有識者で構成される京都府入札監視委員会の審議に付する

名護市の公募型プロポーザルは、渡具知市長の意のままに契約できるようにつくられている、きわめて特殊な例である。

渡具知市長はまるで、独裁者のように振る舞っている。

名護市には「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」がある。名護市の条例は名護市の法律といってよい。その条例をふみにじったのが、渡具知市長なのだ。

名護市の同条例の第3条には「地方自治法第96条第1項第8号の規定により議会の議決に付さなければならない財産の取得又は処分は、予定価格2,000万円以上の不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については、1件のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いとする」と、規定されている。

消防署等跡地は。「予定価格2,000万円以上」、「5,000平方メートル以上」の規定をみたしている。それにもかかわらず条例に従わなかった渡具知市長は、悪質だ・

市政は誰のものか。

北海道の留萌(るもい)市は、自治基本条例を制定し、市民の権利を明らかにしている。第7条では「市民の権利」を定め、市が保有する情報を知る権利や自治に参加する権利を定めている。

日本国憲法は国民主権を定めている。地方の政治は住民の自治による、というのが基本原理なのだ。消防署等跡地はだれのものか。市政はだれのものか。渡具知市長は名護市民に対し、説明責任を果たすべきだ。

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