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星英雄:核兵器を取り押さえろ 原爆の日に思う

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今年もまた「原爆の日」がやってきた。アメリカによる原子爆弾の投下から75年目の2020年8月。広島は6日、長崎は9日、核兵器の廃絶と平和を求めて式典を開いた。被爆者と国民の切なる願いを背に、松井一実広島市長と田上富久長崎市長はどちらも「核兵器禁止条約」の批准を日本政府に求めた。

式典に参列した安倍晋三首相は広島、長崎で挨拶文を読み上げたが、そこに「核兵器禁止条約」の文字はなかった。残虐な核兵器を廃絶する意志のないことがこれまで以上に、むき出しになった。被爆国日本の首相がなぜ。

先日、広島地裁は「黒い雨」の「大雨地域」の人々だけを援護対象とする国の援護行政に対し、それ以外の地域で「黒い雨」を浴びた人々も「被爆者」と認める画期的な判決を示した。「黒い雨」は原爆投下後に降る強い放射能を含んだ雨である。

被爆者らは政府が控訴しないよう願っているが、安倍首相はこれにも沈黙した。安倍首相は痛みを感じないのか。

2月に、広島平和記念資料館をはじめて訪れた。多くの人は無言で遺品や写真や絵に向き合っていた。私も、1つ1つに息を呑んだ。

〈爆心地は一瞬にして瓦礫と化した=広島平和記念資料館から〉

パネルの1つに、こう書かれていた。

一瞬にして街は破壊され、
多くの人々が何が起こったのかも
分からないまま命を奪われました。
生き残った人々も、
火傷でパンパンに膨れ上がった顔、
だらりと垂れ下がった皮膚、
血みどろの身体──変わり果てた姿で
炎の中を逃げまどいました。

どれもが、原爆の残虐さを、そして亡くなった人々の無念の思いを告発していると思った。

〈広島平和記念資料館から〉

「喉が渇き黒い雨を口で受ける女性」の絵の前で立ち止まった。
被爆した喉の渇きから、放射能をたっぷりと含んだ「黒い雨」を求める女性、なんという図か。

核兵器禁止条約は2017年7月7日、国連で採択された。日本はアメリカなどとともに、これに反対した。しかし、50カ国以上が批准すれば国際条約として発効する。現在、43カ国が批准し、核兵器禁止条約の発効は、時間の問題となっている。

核大国アメリカで、核兵器の廃絶を訴えるウィリアム・ペリー元国防長官は、核兵器による大惨事が起きる可能性はかつてなく高い、と警鐘を鳴らす。アメリカとロシアの両国が、INF全廃条約を失効させ、小型で使いやすい核兵器の開発・配備に動く中、「世界終末時計」は残り100秒を知らせている。

核兵器禁止条約は急務であるのに、なぜ日本政府は、核兵器禁止条約を批准し、「核兵器なき世界」へと主導できないのか。

安倍政権がアメリカを模倣して国家安全保障会議を設立し、国家安全保障戦略を策定したのは2013年12月。国家安全保障戦略は「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」と明記し、日本の「安全保障」政策をこれまでになくアメリカの核兵器に依存させてしまった。安倍首相が核兵器禁止条約に背を向ける最大の理由がここにある。

唯一の被爆国として知られる日本政府が核兵器廃絶を主導するどころか、逆に、核兵器禁止条約に対する妨害者として振る舞うようにさせている大きな理由がここにある。

しかし、新型コロナウイルスが安全保障の在り方の転換を促している。

広島、長崎への原爆投下は当時でさえ、非戦闘員や非軍事施設への攻撃を禁止する国際法に違反する行為だった。しかし日本政府は、アメリカに賠償請求することもなく、アメリカの核兵器に依存することこそ、安全保障政策としてきた。人類を滅亡させる核兵器が、日本国民の命と暮らしを守るという、倒錯した論理。虚構でしかない。

〈垂れ下がった目玉を手で受け止める=広島平和記念資料館から〉

そして今、安全保障政策の転機を迎えている。「国家安全保障」から「人間の安全保障」への転換だ。

人間の生命・健康を脅かしているのは、国家間の戦争などではなく新型コロナウイルスであることを、私たちは日々目の当たりにしている。新型コロナウイルスから命を守ることに、軍事力は何の役にも立たない。アメリカのけた外れに高価な武器に巨額の血税を投入しても、国民の命を守らない。

安倍政権が鳴り物入りで作った国家安全保障会議もまるで役に立たない。国家安全保障会議は「新型コロナウイルス対策」と称して、安倍首相を頂点にした会合を1月以来19回も持ってきた。安倍政権の無策、でたらめさはその結果でもある。

日米安保体制下、米軍基地の島にされている沖縄は、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数は、人口比で東京を抜いて断然1位である。日米安保体制下で米兵は日本側の検疫を受けずに入国できる。米兵の感染者数は、これまで310人、沖縄の感染者拡大の震源地となった可能性があるというのに。

沖縄で、米軍はやりたい放題だ。米軍の発がん性物質、有機フッ素化合物(PFAS)が県民の飲み水である水道水を汚染し、県民の3分の1、45万人もの人々の命と健康を脅かしたことを忘れるわけにはいかない。

軍隊・軍事力は国民の命をまもらない。

軍事費はふくらみ続け、今年度予算は過去最大の5兆3000億円にもなる。これだけあれば、新型コロナウイルス対策に思い切った手が打てる。米国製兵器「爆買い」なんて、とんでもない。

アメリカの若い世代に変化がみられることも心強い。アメリカの若者の約7割が「核兵器は必要ない」と考えていることが、NHK広島放送局のアンケート調査で分かった。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は核兵器禁止条約こそ「広島と長崎への原爆投下や、太平洋などでの核実験によって苦しめられた人たちに対する報い、レガシーとなる」と訴えている。世界は日本にまっとうな役割を果たすよう求めているのだ。

国家の安全保障から人間の安全保障へ。核兵器禁止条約の批准・発効はその1歩である。

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