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星英雄:国民に罰則とは本末転倒ではないか、菅首相

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菅政権は国民に懲役刑などの罰則を科すという。しかしそれは本末転倒ではないか。安倍政権とそれを引き継ぐ菅政権の「コロナ対策」失敗によって発せられた「非常事態宣言」。国民は「命の危機」に直面しているのだ。

「兄たり難く弟たり難し」という言葉がある。安倍政権も菅政権も、どちらも甲乙つけがたいほどコロナ対策には無策だ。謙虚さもない。菅政権は国民に責任を押し付けるだけ。残されているのは、退場しかないだろう──。

菅首相の念頭にあるのは、政権浮揚策としてのオリンピックの実現だ。「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」として、とまで言う。世界に感染が急拡大している現状を無視していることに、IOCも菅政権も、国際的批判を浴びている。

日本国内でも、世論との乖離が著しい。NHKの1月の世論調査では「中止すべき」と「さらに延期すべき」の合計は80%。共同通信社は同じく、合計は80%を超えている。

菅政権が期待するのはワクチンだが、菅首相は国民への説明を拒んでいる。
米製薬会社などから「3億1000万回分」のワクチンを確保できる見込みとは言うが、ワクチンの副反応、有効期間などワクチンについて国民が知りたい情報は明らかにしない。「黙って打て」という態度だ。最初にワクチンを打つとされる医療従事者も、打ちたがらない人は少なくない。

日本医師会は、医療崩壊が多発し日常化している事態に何度も警鐘を鳴らしている。東京都では、感染していても病院に入れない「自宅療養」と「入院・療養等調整中」の患者は、合わせて1万5000人いる。この現実こそ、2つの政権の「コロナ対策」の破綻を、雄弁に物語っている。

先日、東京都在住、「無症状」で「自宅療養」中の30代の女性が自殺したと報じられた。小池都知事は「心のケアが必要だ」とコメントしたが、「心のケア」の前に、陽性者を隔離できる検査と施設を整備することこそ必要なのだ。自宅療養中の死亡者は増えている。

「日本モデル」と自賛する安倍政権・菅政権の「コロナ対策」は、非科学的ですでに破綻した。2つの政権は、PCR検査と無症状者を軽視することで一貫している。
厚労省のホームページ、昨年3月2日付の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解」にはこんな記述がある。「重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません」「患者集団(クラスター)が次の集団(クラスター)を生むことが、感染の急速な拡大を招く」

西村康稔経済再生相は昨年7月の衆議院予算委員会でこう答弁している。「無症状の人はホテルや自宅で療養していただく」

安倍政権・菅政権のコロナ対策は「クラスター対策」だった。クラスター(集団発生)で見つかった感染者の行動履歴を調べ、濃厚接触者らを追跡する「積極的疫学調査」がその中心である。しかし、昨年4月には市中感染が広がり、追跡できなくなってきた。

最近では、自治体の「クラスター対策離れ」が始まっている。神奈川県は「感染経路不明率が60%を超えていることから、県内感染期(まん延期)に移行しており、積極的疫学調査を実施しても感染源を特定することが難しくなっています」と言い出し、それに追随するように東京都も「積極的疫学調査」を縮小すると言われる。

それとは逆に、PCR検査がコロナ対策として有効であることを裏付ける実例は多々ある。アメリカの名門大学・コーネル大学の取り組みを朝日新聞が紹介している(1月23日夕刊)。
プール方式のPCR検査で1日7千件の検査能力を確保し、陽性者は隔離。検査を繰り返すことで、感染者はどんどん減少した。PCR検査をした場合と大学を閉鎖したままオンライン授業を続け、学生らを検査しない場合とを比べると、感染者数はPCR検査をした場合より大学閉鎖・オンライン授業のほうが数倍多くなる──という内容だ。

菅政権は国民に対して懲役刑で脅しているが、「反知性」と言ってよい。「専門家会議」の後身、「分科会」メンバー大竹文雄・大阪大学教授が菅政権の恐ろしい実態を明かしている(朝日新聞デジタル版、1月23日)。菅首相の肝いりという「Go To トラベル」は「昨年7月の分科会に・・・何の相談もなく、いきなり議題に入ってきました」。さらに、政権のコロナ対策は恐ろしいまでの非科学であることも証言している。「実はメンバーが感じている一番の障壁は、感染の実態がよくわからないこと」と言うのである。

菅政権よ、ふざけるな。
自らを総括もせず、政権の無策・失敗の責任を棚に上げ、国民に刑事罰を加えるなど、許されるわけがない。

コロナ対策の成功例として知られる台湾が、日本で改めて注目されている。新聞やテレビもとりあげた。

世界の感染状況を集計しているアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の最新データによれば、台湾の感染者はわずか884人、死者は7人に過ぎない。日本の感染者は36万1952人、死者は5065人にもなる。台湾の人口は2357万人だ。日本の2割に満たない台湾の人口を計算に入れても、台湾は日本より圧倒的に感染者も死者も少ないことがわかるだろう。

死者が少ないから日本のコロナ対策、「日本型モデル」は成功した、という安倍政権以来の自画自賛は、ほとんどアメリカのトランプ前大統領と同じデマ、妄想の類である。実態は、東アジア諸国の中の「後進国」だ。

台湾の成功の秘訣は、政治に対する信頼があるからだ、と言える。

新型コロナウイルス対策の台湾成功の立役者の1人、オードリー・タンIT担当相は「社会と行政と経済界との協力」と言う(朝日新聞1月14日)。日本に置き換えれば、「国民と政権と経済界との協力」ということになるだろう。

タンIT担当相はTBS報道特集(1月9日)では「透明性と情報公開」を強調した。コロナ対策本部の記者会見は時間制限がない。「市民本位の政策づくりは国家の透明性につながる」とIT担当相は言う。

台湾から学ぶべき点はたくさんある。翻って、安倍前政権、菅政権は何をやってきたのか。

衆議院調査局の調べでは、桜を見る会の問題で、安倍前首相の虚偽答弁は118回あった。安倍前首相の公設秘書が立件されても、安倍氏の対応は真相を明らかにすることからはほど遠い。当時の菅官房長官も安倍首相にならって虚偽答弁を重ねた。菅氏は首相に就任してからも、日本学術会議の任命拒否の説明を拒否し、国会でコロナ対策を質問する野党への答弁も無内容で、時間も短く、批判を浴びている。政治土壌を、自ら掘り崩しているのだ。

感染症対策(コロナ対策)は、人権の尊重こそが成功するための基本と言われている。施政方針演説で「何よりも国民の皆様の信頼が不可欠」とは言うが、主権者国民にたいする説明責任を果たそうともせず、罰則で国民と対する菅政権。国会の多数派に守られた「独裁」政治の菅政権をなんと評すべきか。筆者への年賀状には、「スガ政権」ならぬ「カス政権」とあった。

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