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星英雄:PCR検査・医療体制はなぜ貧弱なのか

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日本ではいまだにPCR検査がなおざりにされている。なぜなんだろう。

新型コロナ対策は、無症状の感染者を見つけ出し、隔離することが決め手だ。そのため、PCR検査は不可欠なのだ。ところが、これに反する対応をしてきたのが安倍政権、菅政権で、後継の岸田政権も変わらない。

安倍政権は「37.5度以上の発熱が4日日以上続く」ことなどを条件としてPCR検査を制限した。いまでも飲食店などの入口で検温し、それをパスした者が店内に入れるのは、「37.5度以上の発熱」がまかり通っていることの証である。

厚生労働省は新型コロナウイルスの「診療の手引き」(2021年)で、感染者のうち無症状者は30%前後いると推定している。感染者の3割も無症状者がいるとは、実に多い。発熱者は病院に駆け込むなどするが、無症状者は自覚がないので普通の暮らしをし、街中に出かけてはウイルスを拡散する。感染していない者がいくら集まっても感染は広がらない。

わかりやすい例を紹介する。

昨年2020年前半は、都内の主要病院でクラスターが頻発した。代表的な病院が永寿総合病院(東京都台東区)だ。患者・職員214人が感染し、うち患者43人が死亡した。

永寿病院の感染は慶応大学病院に飛び火し、クラスターが発生した。永寿総合病院から送られてきた患者が「無症状」だったため、警戒しなかったという。慶応大学病院の病院長は「日本全国どの病院でも入院前スクリーニングPCR検査を行っていなかった当時としては、感染を事前に検知することは困難」と語っている。永寿総合病院の湯浅理事長も「無症状の陽性者がすり抜けてしまうことは、後からわかった」と証言している。

なぜ日本はこうも、PCR検査を侮るのか。

第2次安倍政権などで厚労大臣を3度務めた自民党の塩崎恭久・前衆議院議員は今度の総選挙で政界を引退したせいか、政府を厳しく批判する。PCR検査を制限したのは「厚労省の医系技官が主張する『検査は抑えたほうがいい』という話を鵜呑みにしてしまった」。そしてこうも言う。「政治の失敗をこれ以上繰り返せば日本はコロナでボロボロになる」(『選択』9月号)。

尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長も、厚労省の医系技官の出だ。政府の分科会は、厚労省の息のかかった「専門家」たちが中心に座っている。

菅前首相は、総選挙の応援演説で「ワクチンは切り札だ」と自慢しているが、実に愚かなことだ。ワクチン接種は重要なことだが、接種しても新型コロナに感染することは誰もが知っている。ワクチン接種の結果、無症状者・軽症者が多くなることも指摘されている。

後述するように、専門家たちが「医療体制の充実」を求めたにもかかわらず、自公政権は医療体制の縮小を続けてきた。国産ワクチンの開発に予算を投入してきたわけでもない。ただ、外国製のワクチンを購入しただけではないか。

国民に「自粛」を求めるだけでは、新型コロナウイルスに立ち向かうことはできない。

なぜ感染者が急激に減ってきたのか。政府の分科会のメンバーも、「人流」の多い、少ない(自粛してるかどうか)ーーでは説明できなくて困っている状況だ。

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授は、「1970年代から、増殖の速いウイルスは自然と衰えていくことは分かっています」(毎日新聞9月16日夕刊)と、ウイルス自壊説を語っている。有力な説と思う。

PCR検査の軽視、「自宅療養」という名の医療放棄。これらの根底にあるのが、長年にわたり政権が医療体制を削減し続けてきた問題だ。

2009年から大流行した「新型インフルエンザ」の「対策総括会議」は、 報告書で政府に強く求めた。「感染症対策に関わる人員体制や予算の充実なくして、抜本的な改善は実現不可能である」「発生前の段階からの体制強化の実現を強く要望」した。しかし、10年の時間があったにもかかわらず、報告書とは逆に、医療体制は細る一方であった。

保健所数は、1992年の852カ所をピークに、毎年のように減少をつづけた。2021年にはほぼ半減し、わずか470カ所に削減された。感染症病床数は1965年の2万4179病床をピークに2019年はわずか1888病床、1割以下に激減された。

PCR検査の制限も、「自宅療養」という名の医療放棄も、貧弱な医療体制をむき出しにしないために行われた。長年の自公連立政権による医療軽視、つまりは人命軽視の政策の結果にほかならない。

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