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星英雄:命の水を守れ、島を戦場にするな 自衛隊ミサイル基地に反対する宮古島市民の闘い

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宮古島の3月は、サトウキビ収穫の真っ盛り。沖縄・那覇空港から空路1時間弱の距離にある宮古島を訪れた。宮古島は、農業と観光の島だ。その宮古島が「基地の島」と化そうとし、住民の命と暮らしを脅かす。島民の根強い反対運動がつづいている。

「宮古島は基地の島となろうとしています」「私たち1人1人が声を上げないと、とんでもないことになります。住民が止めなくて誰が止めますか」

3月11日夕刻、宮古島の中心部、沖縄県宮古島市の庁舎前で、「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」(仲里成繁代表)の清水早子事務局長の声が響いた。道行く人々に他のメンバーがチラシを渡し、黙って受け取る市民。黙してはいても、市民の多くは「不安」を感じているという。

ミサイル基地建設が明るみに出たのは2015年。そのときからいまに続く宮古島市民の抗議行動だ。宮古島市役所前の反対行動に参加していた女性にその思いを聞くと、こう語ってくれた。

「はじめ大福牧場にミサイル基地を造る計画が出てきたとき、エーって驚きました。誰が、どうやって決めたんですか。その時から私も行動するようになりました。平和とか権利とか、生まれながらに与えられていると思っていましたが、誰かが闘っているから、あるのだと」。

市民が危険を感じ取って立ち上がったのとは対照的に、下地宮古島市長は早くから自衛隊受け入れに動いていた。市民に選ばれた市長が、市民に隠れて、市民の命と暮らしはそっちのけで。

市民は自衛隊のミサイル配備で、宮古島が戦場になること、命の水が汚染されることに強く反対している。

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清水さんの案内で、自衛隊ミサイル基地の現場を見て回った。真っ先に向かったのが陸上自衛隊宮古島駐屯地。ここは元ゴルフ場。防衛省は「大福牧場案」が失敗した後、この土地を買収した。市長のアドバイスがあったという。

駐屯地正門前には住民たちの抗議の意志を示す「住民連絡会」の横断幕が風に揺れている。「軍隊は島民を守らなかった」「宮古島に軍隊はいらない」、「宮古島を戦場にしないで」「ミサイル基地いらない!」──。横断幕は住民の意志を端的に表現している。

駐屯地内に目をやれば、ミサイル搭載車両などがずらりと並んでいる。朱色の屋根のところが燃料施設。台形の形の覆土のところが弾薬庫だ。

防衛省ははじめ、弾薬庫ではなく「小火器を入れる保管庫」と言っていた。「弾薬庫とヘリパッドは造らない」と明言してもいた。住民をだましてきたのだ。防衛大臣は国会で陳謝に追い込まれ、「島外に搬出する」と弁解した。だが、市民は信じていない。

事実、「島外に搬出する」という言葉とは逆に、台形の弾薬庫には「1」と「2」の標識がある。共産党の上里樹市議によれば、自衛隊陸上幕僚長が定めた「火薬類の取り扱いに関する達」によって、火災標識の設置が義務付けられている。「1」は最も危険度が高く、対戦車りゅう弾、迫撃砲りゅう弾、誘導弾(ミサイル)など、自衛隊のすべての弾薬が保管されることを示すものだ。「2」は「1」の次に危険度が高い。

駐屯地内の弾薬庫は防衛省の発表でも、民家までわずか150メートルしか離れていない。自衛隊の弾薬取り扱いの教範には、爆発までの時間が2分、2分以内に1キロ先まで避難することが記されている。事故の場合、自衛隊員は避難できたとしても、地域住民が2分以内に1キロも逃げることは不可能だろう。自衛隊にとって、住民の安全は視野の外だ。

まだ重大なことがある。駐屯地内には燃料施設として、ヘリに給油するための大型燃料タンク7基が設置されている。その下は空洞があり、軟弱地盤や活断層があることもわかっている。事故が起きれば、「命の水」の地下水が汚染されてしまう。

宮古島は地下水の島だ。飲料水のすべて、生活用水のほとんどを地下水に頼っている。地下水が汚染されれば、生活が成り立たない。命と健康を守れない。

実は4年前、「命の水を守ろう」というシンポジウムがあった。新城竜一・琉球大学教授(前宮古島市地下水審議会学術部会委員)が、「汚染されれば宮古島の7~8割を占める水道源を失うこととなる」と発言し、学術部会が全員一致で「駐屯地建設反対」を地下水審議会に答申した事実を明らかにした。

ところが市長は、地下水審議会も学術部会も非公開にし、審議会の答申も公表しなかった。そればかりか、「駐屯地建設反対」を答申したことを明らかにした委員全員をクビにした。いま市議たちは改めて地下水審議会の開催を求めているが、市長はそれに応じようとはしない。

弾薬庫も燃料タンクも、事故が起きてからでは遅いのだ。東京電力による福島第一原発事故を忘れないでほしい。生まれ育った故郷に戻れない人たちが今もどれほどいるか。「事故は起きる」を前提に考えれば、弾薬庫や燃料タンクが造られること自体、きわめて恐ろしい。宮古島市民の命と暮らしがかかっている問題なのだ。

保良地区の弾薬庫工事現場は意外と静かだった。サトウキビから砂糖をつくる製糖会社にダンプカーを独占されているため、本格的な工事は先になるという。地面を掘り起こしたような、広大な敷地があった。

ここは元鉱山(採石場)。防衛省は弾薬庫3基をつくり、地対艦・地対空ミサイルを配備する予定という。しかし、「弾薬を枕にして眠れるか」と、ここでも住民は粘り強く抵抗を続けている。

弾薬庫から集落まで、わずか250メートルしか離れていない。保良の弾薬庫の危険性は駐屯地内の弾薬庫の危険性と変わらない。しかも、住民の合意もなく用地取得も完了せず、きちんとした説明もない。2017年には地元の保良と七又の2つの自治会が反対の決議を挙げている。

〈保良の弾薬庫予定地〉

弾薬庫と民家は驚くほど近い

住民たちはスタンディングで抵抗を続けている。地元の下地守さんはこう言う。「機動隊に排除されたりしたが、牛歩戦術で1日2、3時間ダンプを止めて、工事を遅らせることはできた。宮古島に連帯して辺野古のほうからも人は来る。もっと多くの地元住民が参加できるようにしたい」

市民の間には、県知事・オール沖縄勢力が、ミサイル基地建設問題に積極的に取り組んでほしいという意見が根強くある。

〈地元紙に掲載された「ミサイル基地建設反対」の意見広告〉

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「軍隊は住民を守らない」というのが沖縄戦からの教訓だ。安倍・自公政権の安全保障政策も、住民の生命、財産を軽んじることでは当時と違わない。嘘で市民をだまし、ミサイル基地建設のためなら手段を選ばない。新型コロナウイルスをめぐっても、検査体制の不備が指摘されている。米国製の兵器爆買いに巨費を投じても、感染症対策に手抜きをしてきた。

2015年日米防衛協力の指針(ガイドライン)では、島嶼防衛は自衛隊が「一義的責務を負う」と明記された。無人の尖閣諸島をめぐる日中間の争いにアメリカは巻き込まれたくない、というのが専門家の理解である。「退こうとするアメリカ」をどう引き留めるか、日米軍事同盟強化論者たちは沖縄に犠牲を強いる。

辺野古では米軍を引き留めるために新基地を貢ごうとし、宮古島ではアメリカに突き放されて「島嶼防衛」という名の、手段を選ばない強引なミサイル基地建設に走る。

宮古島は誰の島なのか。

今年3月の宮古島市議会。共産党の上里樹議員は自衛隊配備に関する問題で下地市長の姿勢を質した。駐屯地内の弾薬庫、保良の弾薬庫、地下水の汚染問題・・・。上里議員は「市民の生命、財産を守るのが宮古島市ではないか」と市長に迫った。しかし、下地市長は一度も答弁に立たなかった。立てなかった。市民の不安や恐怖にきちんと向き合おうとはしなかった。

日本国憲法は「国民主権」をうたっている。市政の主人公は宮古島市民なのだ。いま、そのことを強く思う。

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