日本の首都・東京は連日のように新型コロナウイルスの感染者数最大を更新している。人間の命の危機だ。だが安倍政権も小池都政も、従来の「対策」の延長線上で事態を糊塗し、抜本的な対策を講じようとはしない。しかし世界の対策の基本は、「検査、そして感染者は隔離する」だ。無症状者の隔離こそがキー・ポイントであることが明らかになってきた。
安倍政権がごり押しする「GoTo トラベル」は今では「GoTo トラブル」と揶揄されている。新型コロナウイルスの感染を全国に広げるとの批判は絶えない。東京都を除外したものの、基準はない。安倍政権の思い付きで決められてゆく。
感染拡大は東京都だけではない。沖縄、福岡、大阪、愛知など全国的な傾向だ。沖縄県の7月31日の新規感染者は、1日当たりの感染者としては過去最高の71人だった。東京都と比較するために人口比で計算すると、沖縄の1日あたりの感染者は東京都の682人に相当する。東京都の1日の最大値、8月1日の472人を上回っているのだ。沖縄県は県独自の緊急事態宣言を発したが、「GoTo トラベル」除外の対象ではない。これだけでも、「GoTo トラベル」のでたらめぶりはわかるだろう。
「GoTo トラベル」は、新型コロナの「拡大が収束した後」に実施するはずだった。それを、あたかも「収束」したかのように言い繕って強行するのが安倍政権だ。事実は、7月の全国の感染者数は約1万7千人。過去の感染拡大のピークは、4月の約1万2千人。それを大きく上回っている。
「アベノマスク」を介護施設などに配布する件も、施設側に断られ、当初の構想はとん挫した。何をいまさら。一事が万事である。
そのうえ、国会を閉じて政策論戦から逃げている。日本国憲法の規定に基づいて野党は臨時国会の召集を要求したが、政府・与党はこたえるつもりはない。首相が主権者国民に対する説明責任を果たすつもりは毛頭ない。
安倍政権のでたらめぶりに、怒らないものはいるのか。尾崎治夫東京都医師会会長も記者会見で政権を糾弾した。「一刻も早く国会を開け、政治の役割を果たせ」と。
安倍晋三首相は緊急事態宣言解除の記者会見で「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」と語ったが、本当に収束したのか。感染拡大の現状をみれば誰もが違うと思うだろう。
当時の尾身茂専門家会議副座長は「実は10倍か、15倍か、20倍かというのは、今の段階では誰も分からない」と、実態を把握できていないと告白していたではないか。恐ろしいことだ。
日本国内には「死者数が少ない」ことをもって、安倍首相と同じように、日本のコロナ対策はうまくいっているとする見方がある。それは真実か。
ジョンズ・ホプキンス大学がまとめた新型コロナウイルスによる各国の死者数(8月1日現在)を見れば分かる。アジアの国々は総じて死者は少ない。各国は日本より死者はすくないのが事実だ。
日本の死者数は1000人を超えているが、韓国301人、マレーシア125人、タイ58人、台湾7人、ベトナム3人などだ。これらの国々の死者は日本より少ない、というのが真実だ。
人口比で見ても日本を下回っている。その成功の要因はPCR検査と隔離を徹底していることだと指摘されている。最近のアメリカ・ニューヨーク州の実例も、PCR検査と感染者の隔離の重要さを示している。
アメリカはいまも、感染者数、死者数で世界のトップだ。しかし、ニューヨーク州は1日6~7万件のPCR検査を実施、しかも誰でも何度でも、無料でPCR検査を受けることができる。もちろん、生活や営業に厳しい規制を伴っているが、先日はニューヨーク市で、死者「0」の日が実現した。
「日本モデル」なんて世界は相手にしていない。現状は収束どころか、全国に拡大しているのが実態だ。日本中を震撼させたクルーズ船の感染拡大から早6カ月、PCR検査を軽視し、感染した無症状者を放置してきた付けが回ってきているのが現状だ。無症状者を発見し、隔離して感染拡大の源とならないようにするのが急務なのだ。そのためのPCR検査である。
7月16日の参院予算委員会で「エピセンターの制圧」が繰り返し強調された。政府が進めてきた「クラスター対策」では、感染拡大は防げないという。
参考人の児玉龍彦・東京大学名誉教授が、新宿など東京の中に形成されつつある「エピセンターの制圧を国の総力でやるべきだ」と訴えたのだ。無症状者を放置するのではなく、感染力のある無症状者が集まり、感染を広げている「エピセンターの制圧」にこそ、国の総力をあげて取り組むべきだ、と。
「エピセンター制圧」の主張は、広がりつつある。東京都医師会も、無症状者の積極的な隔離や「感染震源地エピセンター」に対する徹底した対応を求めるようになった。
しかし政府は対策を変えようとはしない。無症状者について、「ホテルや自宅で療養していただくというのが基本的な考え方」(2020年7月15日衆議院予算委員会、西村康稔経済再生相答弁)と述べている。
東京都も同様だ。都は「自宅療養」や病院にもホテルにもいない「入院・療養等調整中」という呼称で、軽症・無症状の感染者を大量に放置している。家庭内感染が広がっている。
小池都知事は、無症状者が引き起こした都内の院内感染について都民の前で語ったことはない。多くの患者たちが死亡したというのに。感染源が「夜の街」だと強調はしても、無症状者には触れない。
小池都知事は「感染防止徹底宣言ステッカー」を掲げていない店を避けてくださいというが、ステッカーには何の根拠もない。新型コロナウイルスの感染者数が増えたのは、検査数を増やしたからだともいってきたが、これも根拠はなかった。
中国にも学ぶべきことはある。中国は武漢での対策として、10日間で1000の病床をつくり上げた。プレハブでいい。つくって、無症状者を隔離せよ。安倍政権はなぜやろうとしないのか。
「GoTo トラベル」など新型コロナウイルス対策と称して安倍政権は、1次と2次の補正予算、合わせて57兆円の巨費を投じる。明らかに税金のつかい方がおかしい。主権者国民の命がかかっているのだ。