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影山あさ子&藤本幸久:琉球弧を戦場にするな

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<森の映画社から、ドキュメンタリー映画『琉球弧を戦場にするな』のお知らせが届きましたので、以下案内します。文責・星英雄>

私たち(影山&藤本)が沖縄で撮影を始めたのは、2004年。辺野古では、住民たちがカヌーと身体一つで必死に米海兵隊の新基地建設のための作業を止め続けていました。翌05年、辺野古の沖合を埋め立てる新基地計画は白紙撤回され「辺野古見直しへ」と報じられました。喜びもつかの間、日米政府が合意した在日米軍の再編計画により、直ちに現在進められている沿岸を埋め立てる新基地計画に置き換えられました。イラクへ自衛隊を派兵した小泉政権の時代です。この在日米軍の再編計画で打ち出されたことは、「日米の軍事的一体化」でした。目下の同盟国、日本の自衛隊が、アメリカの戦争のために一層の役割を担うということです。

20年後の今、辺野古の新基地はできないまま。しかし、九州の南から台湾にかけて弓なりに連なる琉球弧(りゅうきゅうこ)の島々は、自衛隊の基地だらけとなりました。

アメリカのために日本を戦場にする準備

2016年に与那国島に陸上自衛隊のレーダー基地がつくられ、沿岸監視部隊が配備されました。19年には宮古島と奄美大島に、23年には石垣島にミサイル基地がつくられました。今年は沖縄島にも新たに陸自のミサイル部隊が配備されました。種子島の離島、馬毛島(まげしま)に建設中の基地は陸海空の自衛隊に加え、米軍の空母艦載機の離着陸訓練場とされます。

すでに基地のある島々も、基地の拡大が止まりません。前線司令部とされる宮古島には今年度、電子戦部隊が新たに配備される予定です。

与那国島には、新たにミサイル部隊の配備が予定されています。台風から島を守る貴重な湿地やリーフを浚渫(しゅんせつ)し、自衛隊や海上保安庁が自由に使える巨大な港をつくる計画も進められようとしています。日米の共同軍事演習は絶え間なく続けられ、野戦病院の設置や負傷者の護送の訓練も行われています。移送先は本州の病院です。一般の病院がすでに動員(徴用)されているのです。訓練には遺体の仮埋葬もあり、宮古島の公共施設には遺体の収容袋が設置されています。基地も演習場もない徳之島でも、上陸演習やパラシュート降下訓練が繰り返されています。

地図で島々の場所を見てみてください。仮想敵国・中国に対する最前線基地を琉球弧に構築するという戦争準備、戦争計画の形がくっきりと浮かび上がります。計画されている次の戦争は、」日本の自衛隊がアメリカのために、日本の国土を戦場に、核保有国・中国と対峙する戦争。その主戦場が琉球弧なのです。「基地ができたら軍隊が来る、軍隊が来たら戦争になる」と話していた沖縄戦の体験者の言葉は全く正しいと感じています。

島の人たちにも、私たちの暮らしの中にも、大事なお客さんであり、ビジネスパートナーであり、友人でもある中国を相手に、戦争すべき理由はありません。しかし、尖閣や台湾を理由に危機をあおり、中国を封じ込めるための戦争を準備するアメリカ、そのアメリカと一体となった日本政府の意思は確固たるものです。

島で暮らす人々が島外避難をさせられる

国民保護法により、有事の避難は自治体の責任とされ、自衛隊の役割ではありません。各地で避難訓練が行われていますが、沖縄県内で人口最多の沖縄島は屋内避難。宮古、八重山の住民ら12万人は、船や飛行機で九州に避難するという計画です。国の指示を受け、沖縄県も市 町村も、真面目に避難計画づくりを進めています。

台風一つで何日も孤立する島々です。ミサイルが降る中を運良く脱出できても、有事の日本列島のどこが、安全な場所になるのでしょう。災害も頻発し、原発も多い国です。また、私たちの暮らす地域に避難者を受け入れ、共に生きていく準備と覚悟はあるのでしょうか。

与那国町では有事の際、住民に避難費用を支給する条例が2022年に具議会で可決されました。糸数健一与那国町長が、その記者会見で「各自でなんとか生き延びてくれ」と語ったのは衝撃的でした。仕事は、家は、牛は、畑は、財産はどうなるのでしょう。果たして島に戻れるのでしょうか。「島を守ると言ったのに、どんどん島を出ていく話になるのは、とういうこと」(与那国住民)でしょう。

「基地ができたら、標的にされる」と多くの住民が反対してきた基地建設は、それ自体さまざまな問題をはらんでいます。

宮古島を例にとれば、基地の有害物質が島の生活用水である地下水を汚染すれば、それだけで暮らせなくなります。最新鋭のレーダーの電磁波は、ヨーロッパの安全基準の2000倍を超える深刻さで、周辺の住宅や農地を汚染しています。海上保安庁の巡視船による機関砲の誤射事件、乗員10名が死亡した陸自ヘリの墜落など重大事故も起きています。駐屯地の用地取得を巡っては、下地敏彦前宮古島市長は汚職で有罪となりました。

沖縄島・うるま市に計画されていた自衛隊の訓練場計画を断念させたことは、最近の明るいニュースです。住民たちは今日も抗い続けています。

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国民が戦争を始めるのではない。国家が戦争を始めるのだ。

国家は国民を守らない。国家が戦争で守るのは、せいぜい領土などに過ぎない。自公政権はすでに先島諸島からの「避難計画」を公表済みだ。「避難計画」が示すことは、戦場になるのは沖縄の先島諸島、ということだ。(「星英雄:日米安保条約とはどういうものか」を参照)

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上映権付DVD『琉球弧を戦場にするな』の申し込みは森の映画社へ。

電話/FAX 011ー206-4570

2024年版は1万円
2025年版は5千円

2024年版を見て、つぎに2025年版を見ることをお勧めします。

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