国民民主党の「第50回衆議院議員総選挙特設サイト」を見ると「政策」の欄に所得税減税として「基礎控除等を103万円→178万円に拡充、年少扶養控除の復活」とある。
基礎控除を「178万円にする」国民民主党の政策とは、所得税がかかる年収の最低ラインを103万円から178万円に引き上げることだ。
つまり、年収178万円までは無税にすることになる。
この通りなら、働く者の所得が増え、日本は安泰なのだ。
しかし、そうはいかない。異論はたくさんある。
基礎控除を178万円にする国民民主党の政策が今、石破茂首相や、自公政権との間で取引材料になっている。
そのことが「部分連合」とか、野党(や党)と与党(よ党)の間、「ゆ党」と問題視され、大問題になっている。
問題は地方税と国税、合わせて7~8兆税収が減るということだ。
将来、増税されるのではないかという不安もある。そのため、消費が控えられる可能性もある。
さらに、地方税の減収は「住民サービスの質の低下につながる懸念もある」という指摘がある。
その上「所得が多い人ほど減税の恩恵が大きくなる」という指摘もある。
もっと根本的な指摘もある。
東京大学の近藤絢子教授(労働経済学)は、「103万円の壁」は「ある種の誤解かもしれません」と次のように言う。
「103万円を超すと税制上の扶養を外れますが、年収150万円までは配偶者特別控除という名前で同じ額(38万円)の控除が受けられる。150万円を超えると夫の優遇額が少しずつ減り、201万円を超えると優遇がなくなります。それがあまり理解されていないのかもしれません」(朝日新聞11月12日付朝刊)
「自公政権ノー」の民意に逆らうのが国民民主党だ。
過去にも、その例はある。岸田文雄政権の2022年度予算案に賛成したのだ。
この時も、岸田首相がガソリン税の一時的な引き下げを検討すると発言したことを国民民主党が評価したものだった。
マスコミは「野党が政府提出の当初予算案に賛成するのは異例の対応」と書き立てた。
11月11日、衆院の首相指名選挙があった。首相指名選挙は、30年ぶりに決選投票となった。
上位2人の決選投票は得票数の多い方が選出される仕組みだ。自民、公明両党が支持した石破氏が221票を獲得し、野田氏の160票を上回った。
「維新、国民民主、れいわ、参政党、日本保守党などが石破、野田両氏以外の名前で投票したため、無効票は84票に達した」(毎日新聞11月12日付朝刊)
国民民主党などが、あえて無効票を投じたせいで、石破首相は誕生したのだ。
自公政権は少数与党となり、政策ごとに野党と連携せざるを得なくなった。国民民主党をとりこむのに必死なのだ。
自公政権と国民民主党の間で、国民不在の「取引」の道具となっているのが「103万円の壁」なのだ。