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星英雄:北村隆志・木村孝・澤田章子『名作で読む日本近代史』を読んで

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宮本百合子の『貧しき人々の群』は坪内逍遥の推薦で『中央公論』に発表されたという。『貧しき人々の群』は私の好きな作品の1つだ。

冒頭部分の「私はどうぞして倒れ得る者になりとうございます。地響を立てて倒れ得る者になりとうございます」は、忘れることはできない。

『名作で読む日本近代史』は宮本百合子について「日本の近現代文学史において、世界の戦争と平和、階級格差の問題に関して、最も積極的にかかわり、筆舌を尽くした作家」と紹介する。

私もそう思う。

第24章は、石川啄木をとりあげている。

「啄木の生涯はわずか二六年の短いもの」だったにもかかわらず「歌人のなかで、石川啄木ほど、多くの人に親しまれている歌人はいないでしょう」との記述がある。

「進退窮まるどん底に落ちこんだことで、自己と社会の真実が見えてきた」

『名作で読む日本近代史』は、「失意と貧困こそ啄木文学の母でした」と言う。

啄木はこう語る。「僕は長い間自分を社会主義者と呼ぶことを躊躇していたが、今ではもう躊躇しない」

筆者はここに啄木の変革の思想を見る。

『名作で読む日本近代史』は、第1章の夏目漱石『野分』『こころ』から第三三章細井和喜蔵『女工哀史』が収められている。

同書は、学習の友社から1500円+税で発売。

名作を読みながら、ぜひ、日本の激動の近代史に思いをはせてほしいと願う。

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