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星英雄:汚染源なのに、立ち入り調査を認めない米軍

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発がん性物質といわれる有機フッ素化合物(総称PFAS=ピーファス〉)が大問題となっている。沖縄では「汚染源は米軍だ」とほとんどの人は思っているが、米軍は基地内への立ち入り調査を認めない。何が問題なのか。

当ウェブサイト(沖縄と日本の未来のために沖縄を考えるhttp://kangaeru.okinawa)がはじめてPFAS問題をとりあげたのは、2019年12月「星英雄:米軍のやりたい放題を許すなーー沖縄の水道水汚染の元凶は米軍だ」である。

市民運動団体・嘉手納ピースアクションが、米軍嘉手納基地のフェンスに張り付けた横断幕「米軍による水道水の汚染許さん!!」が今も心に残る。

嘉手納ピースアクションの世話人・伊波義安さんはPFAS問題の先駆者だ。そしていまも「PFAS汚染から市民の生命を守る連絡会」共同代表をつとめている。

その後も、2020年9月には「星英雄:国民の命より米軍が大事なのか、菅政権」、2022年1月には「ちゅら水(きれいな水)を返せ! 沖縄・金武町の住民の叫び」などを掲載してきた。

PFASは、「環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議」の「PFOS、PFOAに関するQ&A集 2023年7月時点」によれば「1万種以上の物質がある」という有機フッ素化合物の総称。米軍や自衛隊の泡消火剤などに利用されている。自然界でほとんど分解されないので、「永遠の化学物質(フォーエバー・ケミカル)」と言われている。PFASのうち、PFOS(ピーフォス=ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ピーフォア=ペルフルオロオクタン酸)は、特に毒性が強い。

残留性有機汚染物質から人の健康と環境を保護することを目的とする「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」では、2009年から原則禁止されている。

北谷浄水場は沖縄県最大の浄水場だ。県民約44万人に水を供給している。米軍嘉手納基地の中と基地の近くを流れる川が北谷浄水場に注ぎ込む。その川から高濃度のPFASが検出された。県民が米軍を疑うのは理由があるのだ。潔白を証明したければ基地内への立ち入り調査を認めるべきだ。

沖縄県はこれまで6回、米軍基地内への立ち入り調査を求め、2回認められた。これについて、沖縄県基地対策課はこう言う。

「米軍の裁量次第だ。米軍が事故だと認めたものは1度くらいは調査をさせ、それ以降は認めない。県は、米軍に委ねらているものも、改定するべきだと要請している」

「事故」は多くの市民も目撃している。隠しようがない。

何が問題なのか。

日米安保条約の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」。

日米地位協定の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」。つまり、日米安保条約第6条に基づいて地位協定はあるのだ。日米安保条約と日米地位協定は不可分の関係にある。

日米安保条約第6条は、日本全国、アメリカが望めばどこでも基地にできるので、「全土基地方式」と呼ばれる。世界に例がない。

沖縄県の「他国地位協定調査申間報告書」(2018年)がある。米軍が駐留しているドイツ、イタリアの様子が記されている。

ドイツでは「周辺自治体の首長や職員には(基地への)立入証が交付されており、正当な理由があれば立ち入りが可能。また、 ドイツの米軍基地内にはドイツの警察官2名が常駐している。各基地には騒音軽減委員会が設けられ、周辺自治体の意見等を米軍が聴取し、前向きに対応している状況であった。」

イタリアについてはこうある。「各基地には州レベルでの地域委員会が設けられており、自治体からの要望は、委員会等を通じてイタリア軍司令官が対応している。また、飛行ルートの変更など、自治体からの要望は受け入れられている状況であった。」

敗戦後79年になる。おなじ第2次世界大戦の敗戦国であっても、日独伊3国を比較すれば、これほど大きな違いがあるのだ。

沖縄だけの問題ではない。首都・東京の米軍横田基地、神奈川県の米軍厚木基地、米軍横須賀基地の周辺も汚染されていることが明らかになっている。

アメリカ本国ではとうなっているのか。

アメリカでは、環境保護庁(EPA)長官が、「国家的危機」と発言して以来、米軍への追及が厳しい。

市民の抗議活動が激化している。それらをうけて米環境保護庁は規制を強化している。PFOSは0・02NG/L、PFOAは0・004NG/Lが基準値だ。(NGはナノグラム。1ナノグラムは1グラムの10億分の1グラム。/Lは1リットル中)

日本はどうか。厚生労働省は暫定目標値として、PFOSとPFOAの合算値が50NG/L以下としている。

アメリカ国内よりはるかに低い日本の暫定目標値さえ守らない米軍。横暴な米軍を野放しにしている日本の政府。いったいこの国は、アメリカの何なんだ。これでいいのか──。

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