沖縄のいま

星英雄:米軍は立ち入り調査を認めよ、日本政府はいつまで自国民より米軍を大事にするのか

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米軍基地が集中する沖縄で、飲み水の汚染が発覚してから早くも6年が経過した。「汚染源は米軍」と誰もが思っていても、いまだに米軍は汚染源を特定する立ち入り調査を許可しない。アメリカでは、米軍による水質汚染に対して年々厳しい基準が設けられているが、日本では米軍はやりたい放題だ。米軍普天間基地のある宜野湾市で、市民団体「宜野湾ちゅら水会」(仲松典子、町田直美共同代表)の人たちの話を聞いた。

驚くべき調査結果だった。普天間第二小学校の土壌から検出された有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)は強い発がん性を有する物質として知られている。そのPFASが、普天間第二小学校の裏門付近でアメリカが許容する基準の29倍の数値を示していたのである。

「宜野湾ちゅら水会」が沖縄県環境科学センターの協力で普天間第二小学校の3つの地点から土壌を採取、分析結果を公表したのは今年9月のことだった。

詳細な計測数値は、裏門付近では土壌1グラム当たりPFOS(ピーホス)1・1ナノグラムとPFOA(ピーホア)0・6ナノグラム、グラウンド南側のバックネット裏ではPFOS0・7ナノグラムとPFOA0・3ナノグラムが検出されたのだ。裏門近くには、授業の一環として野菜を育てる畑もあるという。

普天間第二小学校

普天間第二小学校の裏門付近

本来は、宜野湾市など行政サイドがきちんとやるべきことなのに、日本には暫定基準値しかない。法律で定められた規制値がないことを口実に、行政は調査にはきわめて消極的だった。

「宜野湾ちゅら水会」が調査するきっかけは、昨年12月の「米軍が普天間飛行場の消火訓練施設の有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)汚水を、普天間第二小学校に近接する水路を使って民間地に放出していた」という沖縄タイムスの記事だった。

ところが、宜野湾市は健康への影響は「極めて小さい」とし、教育長は「今まで通り安心してグラウンドを使ってほしい」と安全性を強調したのだから、そのことは今でも語り草となっている。政府をはじめ、県も市も、行政は市民の健康と命を守ることにきわめて消極的だったのである。

PFASは自然界でほとんど分解されないので、「永遠の化学物質」と呼ばれている。人間の体内に蓄積され、発がん性が指摘されている。幼児と成長期の子どもに対する影響は大きい。その種類は多く、なかでもPFOS(ピーフォス=パーフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ピーフォア=パーフルオロオクタン酸)は特に毒性が強いことで知られる。米軍が使用する泡消火剤に含まれていることも、天下周知の事実である。

「宜野湾ちゅら水会」のメンバーである照屋正史さんの案内で、土壌を採取した宜野湾第二小学校の裏門付近の様子を見た。照屋さんはこんな説明をしてくれた。「裏門から240メートルのところに、泡消火剤を使って訓練する米軍の消火訓練施設がある。泡消火剤の汚染水は排水口を経由して暗渠に流れこんでいるのです」

宜野湾市基地政策部基地渉外課発行パンフ『まちのど真ん中にある普天間飛行場』から。赤線の内側が宜野湾市。黄色の線の内側が米軍普天間基地。赤字で「小学校」とあるのが「普天間第二小学校」

米軍普天間基地は宜野湾市の中心部を占拠している。その米軍普天間基地に隣接して普天間第二小学校はある。1996年「軍用地を買収してグラウンドを拡大した」(宜野湾市基地渉外課)という。米軍普天間基地は普天間第二小学校より高い位置にあり、基地の表面の水も地下水もすべて普天間第二小学校に流れ込む地形だ。

米軍基地があることで、危険は常に隣り合わせだ。2017年には、普天間第二小学校のグラウンドに、米軍普天間基地所属のヘリの窓が落下した。この後、ヘリの飛来を確認する為の監視カメラ、モニター、監視員を配置した。さらに、非難訓練まで実施する事態となった。

「#コドソラ」も「子どもたちに安全安心を」と、訴え続けている。「#コドソラ」は普天間第二小学校に通う子どもたちの母親がつくった。5年前、宜野湾市の緑ヶ丘保育園に米軍ヘリの部品が落下した時の園児の母親たちだ。

米軍(海兵隊)は昨年8月、普天間基地に保管していた有機フッ素化合物(PFAS)の汚染水を公共下水道に放出した。「宜野湾市民は毒でもくらえ!」といわんばかりの振る舞いは、敗戦後75年を経た今も、米軍こそ沖縄を統治する独裁者だと言わんばかりだ。日本政府は、何を考えているのだろうか。

PFAS汚染水は農業にも深刻な被害を与えている。農業を営む宜野湾市議の宮城マサルさんはいう。「葉野菜にはPFASが顕著にあらわれる。他方、根菜類は少な目だ。PFASをなんとかして根絶してほしい」

深刻な事態になお声をあげない市民も少なくないが、「孫たちには住んでほしくない」というのが、市民の偽らざる心境でもある。「宜野湾ちゅら水会」共同代表の町田さんは「アメリカは民主的な国なのか。沖縄では人権をふみにじっても平気だ。子どもたちの未来がかかっている問題なので、あきらめず、やるべきことをやっていくつもりだが、行政はきちんとした調査をしてほしい」と静かに話す。

日本政府の弱腰もあって、在日米軍は好き勝手、やりたい放題だが、アメリカ本国ではどうだろうか。

アメリカでは年々規制がきびしくなってきている。米国環境保護庁(EPA)は6月、有機フッ素化合物PFASの規制を大幅に強化した。PFASの一種、PFOA(ピーホア)とPFOS(ピーホス)の合計値をそれまでの70ナノグラムから、PFOAは0・004ナノグラム、PFOSは0・02ナノグラムに引き下げた。合計値はそれまでの約3000倍の厳しさとなる(正式決定はこれから)。

在日米軍の日本国民に対する横暴なふるまいはなぜ許されるのか。原因は日米安保条約・日米地位協定にあるというのが大方の理解だ。

沖縄県基地対策課は「米軍が沖縄県の立ち入り調査を認めたのは1度だけある」という。2020年4月、米軍普天間基地から泡消火剤が大量に漏出した時だ。しかしそれは、公道や住宅街に広がったため、隠しようがなかったからにほかならない。肝心の、6年前からの北谷浄水場の汚染源とみなされている米軍嘉手納基や、米軍普天間基地などへの立ち入り調査は認めない。

日米地位協定第3条1項にはこうある。「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」。米軍の排他的管理権と呼ばれている。

それだけではない。照屋さんは「電力や水道、生活に必須のインフラを米軍に押さえられている」と指摘する。

そのことを示す沖縄県企業局長から(防衛省)沖縄防衛局長に宛てた「提供民公有財産等の一時使用に係る使用期間の更新について(申講)」という文書がある。
「下記のとおり更新を申請いたしますので、よろしくお取り計らい下さいますようお願いします」と、企業局の9つの施設名。米軍普天間基地を通る「伊佐~大謝名送水管」、米軍基地キャンプ・ハンセンを通る「金武~石川浄水場導水管」など9施設が記されている。

沖縄県企業局は、2022年度は26施設を申請したという。

米軍基地を提供した日本が、在日米軍に住民の生殺与奪の権を握られた形である。これこそが日米安保条約と日米地位協定に基づく日米同盟関係なのだ。日本政府はいつまで自国民を犠牲にするのか。

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