沖縄のいま

星英雄:自衛隊・ミサイル部隊配備のためなら何をやっても許されるというのか いま、石垣島で起きていること

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日本の最南端、沖縄県石垣市で民主主義の根幹を揺るがす大事件が起きた。自衛隊・ミサイル部隊の配備を容認する市議らによって、「自治体の憲法」ともいわれる自治基本条例が骨抜きにされたのだ。住民たちは「民主主義を否定し、市民の権利を奪うことは許されない」と反撃している。

「こんなことを議会でやれるなら、何でもありになってしまう。市議たちの数の力で、憲法で保障された市民の権利を制限し、奪おうとするのは暴挙以外のなにものでもない」。「石垣市住民投票を求める会」の宮良央(みやら・なか)さんは憤る。

住民の命と生活を脅かす自衛隊・ミサイル部隊に土地を売却したゴルフ場の代表者友寄市議が提案者となり、自治基本条例の改悪が可決されたのは6月28日だった。

石垣市自治基本条例は、市民参加の充実こそがこれからの市政のあり方だとうたい、自治基本条例が「市政運営の最高規範」であると定めていた。住民の意思に基づくのが「住民自治」という日本国憲法の精神に沿うものだ。

石垣市自治基本条例は、目的を定めた第1条でこう言っている。「この条例は、石垣市における自治の基本理念と基本原則を明らかにし、市民の権利及び責務、事業者等の権利及び責務、市議会及び市長その他執行機関の責務並びに市政運営の原則を定めることにより相互に理解し合い、共に手を携えて豊かな地域社会を築くことを目的とする」

住民投票についてはこう定めていた。第28条1項 は「市民のうち本市において選挙権を有する者は、市政に係る重要事項について、その総数の4分の1以上の者の連署をもって、その代表者から市長に対して住民投票の実施を請求することができる」とし、その第4項で「 市長は、第1項の規定による請求があったときは、所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない」と明記している。

「市政運営の最高規範」や住民投票の規定は友寄市議らによってすべて削除された。

市民の定義も変えられた。「市内に住み、又は市内で働き、学び、若しくは活動する人」から「市内に住所を有する人」に限定された。竹富町の高校生は石垣市内の寮で生活し学んでいる。また、石垣市は観光の島だ。住民票を移さないで働いている人たちがたくさんいる。日本の社会は日本国籍を持たない人々、特にアジア系の人々を排除する傾向が強いが、それに共通する内容だ。世界の動きにも逆行する。

〈自治基本条例改悪のその日に抗議する石垣市民=6月28日撮影。「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の提供〉

〈石垣市の自衛隊基地造成現場=7月7日撮影。「基地いらないチーム石垣」の提供〉

「暴挙だ」と怒る市民らは、自治基本条例を骨抜きにする内容だけでなく、手続き面から見ても異常だと批判する。

友寄市議の提案は常軌を逸していた。議会で議論をさせないために会期末に提案。条例改正案の提案には、地方自治法第112条に基づき①議員定数の12分の1(石垣市議会は2人)以上の賛成者がなければならない。②議案の提出は文書をもってこれをしなければならないーーと定めている。

この点を議会で指摘した野党市議もいた。本来なら友寄市議の提案は取り上げられないはずだった。ところが、議長(与党出身)は「慣例で認められる」と友寄市議の地方自治法違反を容認し、本会議での採決に至ったのだ。市民からパブリックコメントを求めることさえもしなかった。

このことがどれほど乱暴か、与党市議のなかから2人もの退席者が出たことにも現れている。

自治基本条例には、5年以内に見直す規定がある。事実、見直しの手続きは進行中だった。昨年9月に審議会が設置され、今年3月、自治基本条例の課題を指摘し、見直しの方向性を提案する答申が市長に提出された。通常の手続きなら、答申を受けた市長が自治基本条例の見直し案を提起する。それが正当な手順なのだ。

ところが、それを待たずに、「最高規範」や「住民投票」条項の削除を強行したのである。この暴挙に中山市長も同調した。両者の連係プレーという見方は消えない。

今回の事態の異常さは、自治基本条例制定当時のいきさつを振り返るといっそうはっきりする。友寄市議らの市民の目を盗むような短時間での改悪ではなく、市民の意見に沿った自治基本条例にするために、2年以上の時間をかけて制定した、その違いである。どれほど石垣市民を重視したかは、市民代表の「市民検討会議」が14回の審議を重ねたことにも明らかだ。

石垣市の自治基本条例は沖縄県では最初に、全国でも先駆的に制定された。当時の石垣市はどんな思いだったのだろうか。

2000年に地方分権一括法が施行されたことで、国と地方の関係も「上下・主従」から「対等・協力」となった。石垣市は新たな「市民協同のまちづくり」を必要とするようになったのだ。

制定直前の2009年6月議会で、当時の市長は自治基本条例の提案理由にについてこう説明した。「行政主導から市民が主役へ」の市政は「市民の参画なしに進むことができない」。「市民主役の分権時代のまちづくり」が自治基本条例を必要としていると、強調したのである。

市民に寄り添う石垣市の自治基本条例を、自衛隊基地配備容認派はなぜ目の敵にするのか。

それを解く1つのカギがある。「住民投票」だ。若者が中心の「石垣市住民投票を求める会」は、石垣市平得大俣(ひらえおおまた)への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を求めて、2018年10月31日から1カ月で、1万4263筆の有効署名を集めた。ところが、市議会は住民投票案を否決したのだ。

これに対し、「市長は住民投票の実施義務を負う」と「石垣市住民投票を求める会」は提訴して、いまも係争中である。「石垣市住民投票を求める会」が根拠としたのは、自治基本条例の住民投票条項だった。

友寄市議らが今回、民主主義に敵対する暴挙に走ったのも、自衛隊配備容認派の市長とその与党が、どれほど市民の意志表示を恐れているかの現われにほかならない。実際、住民投票請求以前の2015年、自治基本条例の見直し・改正案が提起されたが、友寄市議を含め、全市議が賛成したのだった。つまり、市民の住民投票請求以前には、友寄市議らは今回憎悪の対象とした自治基本条例に、実は賛成していたのである。

住民投票は、自衛隊の賛否を問うものではない。自衛隊・ミサイル部隊の石垣市への配備、つまり市民の命と暮らしの安全にかかわる問題、まちづくりの根本にかかわる問題で、住民の声をきいてほしいと訴えているのだ。

住民投票は、石垣市では「新たな自治の仕組みの一つ」として導入された。市民参加の有力な方法の1つとして、これまでに多くの自治体で実施しているのが事実だ。首長は住民投票によって示された意見を最大限に尊重することが望ましいとされている。憲法学者の浦部法穂氏は「住民からの住民投票の要求を、長や議会が無視して否決するというのは、どうみても民主主義的でない」(『全訂 憲法学教室』)と強調している。

そもそも市長や市議たちの役割は何なのか。地方自治法第1条の2は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として……」と明記している。住民の福祉(幸福)の増進が、その務めではないか。市議会議員の数の横暴で市民の権利を奪うことは許されないのだ。

「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の藤井幸子さんはこう言う。「あまりにひどい暴挙に、危機感を持っている人が保守層にも少なくありません。民主主義・住民自治を破壊するこのやり方に怒りをもつ人々が声をあげれば石垣市政は変えられるし、また前進をはじめると思います」

 

 

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