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星英雄:菅首相は日本を戦前の暗黒時代に戻したいのか 学術会議任命拒否の意味するところ

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菅首相が日本学術会議会員の候補6人を任命しなかったことは、日本国憲法が保障する「学問の自由」を侵害することだと、大きな批判が沸き起こっている。任命を拒否したケースはこれまでにない。しかも任命拒否の理由は明らかにしない。菅首相のやり方は、「黙って従え」という独裁者ぶりだ。あの「暗黒時代」へ逆戻りさせたいのか。ことは、国民1人1人の問題でもある。許すな菅独裁。

問題のはじまりは、日本学術会議が「優れた研究・業績がある」として会員候補105人を推薦したのに対し、菅首相が6人の任命を拒否したことだ。菅首相は、会員は日本学術会議の推薦に基づき首相が任命する、としている日本学術会議法の規定を踏みにじっている。

日本学術会議法は何度か改正されているが、大きく変わったのは1984年である。それまで会員の選出は学者の立候補・公選によるものだったが、推薦制度に変えた。推薦に基づいて首相が任命するという形式だ。

首相が任命する形式とはいえ、学術会議の自主性の尊重や政府の不介入が保たれるか疑念が生じた。その点について、共産党の吉川春子参院議員が、1983年11月の参院文教委員会で質した。

所管の総理府総務長官はこう答弁した。「ただ形だけの推薦制であって、学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」。

任命を拒否された1人、早稲田大学の岡田正則教授は10月2日の野党合同ヒアリングでこう訴えた。「『聞きたい意見しか聞かないよ』。こうなってしまうのが今後の日本にとって大変大きな禍根を残すことになるんじゃないか」

菅首相の任命拒否はこの日本学術会議法、そして日本国憲法第23条「学問の自由は、これを保障する」という規定に反することは明白だ。

菅首相に任命を拒否された6人には共通点がある。違憲の安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などに反対した学者たちばかりだ。安倍政権の悪法に反対した人物を狙い打ちにしたといえる。

ただ、個別の学者たちへの意趣返しに止まらないことも明らかだ。今回の菅首相の任命拒否は、学術会議が軍事研究に反対した時から水面下で動き出したとの指摘がある。

アメリカに従って軍拡を推進した安倍政権は、軍事製品の開発につなげる思惑で大学などの軍事研究に資金提供を始めた。これに強く反対したのが日本学術会議だった。

日本学術会議は2017年、「 軍事的安全保障研究に関する声明 」を出し、「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」姿勢を堅持する立場を表明し、政府の軍事研究費に依存する制度ではなく「科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実」を求めたのだ。

菅首相は、「法に基づいて適切に対応した結果だ」と言うだけで、任命拒否の説明責任を果たそうとしない。あくまで、自分のしたことは正しい、問答無用の態度だ。

日本学術会議は「学者の国会」ともいわれ、政府から独立して政策提言や科学の啓発活動などを行う国の特別な機関だ。ホームページにはこうある。

「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました」

「日本学術会議は、我が国の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の科学者を内外に代表する機関」「任期は6年で、3年ごとに半数を任命します」

日本学術会議が誕生したのは1949年1月だった。発会式には、「科学の振興を通じて、世界の平和と人類社会の福祉に貢献しようとする大きな理想を持たなければなりません」と、時の吉田茂首相が祝辞を寄せた。

日本学術会議法を制定する国会審議では担当大臣が「日本学術会議が政府の諮問的、審議的機関としての性格を有するが、その活動は飽くまで科学者の自主性、独立性に基いて行われる」と、答弁している。

日本学術会議設立に先立つ1947年5月3日には、戦争を放棄し、表現の自由、学問の自由を保障する日本国憲法が公布されていた。

振り返れば、表現の自由、学問の自由にとって国家権力はいつも脅威だった。

諸外国の憲法で「学問の自由」を保障している憲法は多くないという。しかし、日本国憲法は「学問の自由は、これを保障する」と明記している。なぜか。はっきりとした理由がある。天皇主権の下、政府、軍部らが侵略戦争を始めた暗黒の時代に対する反省からである。

芦部信喜著『憲法第七版』はこう記述している。滝川事件、天皇機関説事件のように「学問の自由ないしは学説の内容が、直接に国家権力によって侵害された歴史を踏まえて、とくに規定された」──。

安倍政権を継承するという菅首相は、辺野古新基地建設も軍拡路線も継承する。しかし、新型コロナウイルスは、人間の命、安全の問題をだれの目にもわかりやすく示した。旧来の安全保障・日米軍事同盟は役にたたないということを。軍事費をコロナ対策に回せ、という叫びが全国に広がりつつある。

安倍政権は森友・加計問題のように、国民が知るべき公文書の、改ざん、隠ぺい、破棄をしてまで真相を覆い隠した。そうするために、「全体の奉仕者」であるはずの官僚を政権の意のままに従わせたのは菅首相、当時の菅官房長官だった。

日本学術会議会員候補の任命拒否事件は、日本国憲法が保障する「学問の自由」を踏みにじっても、政府批判は許さないという菅首相のどす黒い体質が表面化したものであると言える。

学問の自由が保障されなければ、国民の知る権利、国民主権も危うくなる。だが、国民には国会議員を選ぶ「力」がある。許すな菅独裁。

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