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星英雄:都知事選の結果と「野党共闘」について考える

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全国的な注目を集めていた東京都知事選が終わった。予想していたとはいえ、都政の変革を望む都民の1人としては、きわめて残念な結果だ。「野党統一候補」は負けるべくして負けた選挙だったとも思う。「負けに不思議の負けなし」(野村克也監督)というが、野党はどんな総括をするのだろうか。とくに、「野党共闘」について──。

都知事選の開票結果は現職小池百合子氏の圧勝だった。前回よりも投票率が下がったにもかかわらず、得票数は75万のばして366万票。野党統一候補の宇都宮健児氏は、支援した3党が昨年参院選比例代表で獲得した票の半分以下、わずか84万票にとどまった。新型コロナウイルス対策やオリンピック・パラリンピックをどうするかなど、都政の大テーマが問われたにもかかわらず。

宇都宮氏を立憲民主党や日本共産党、社会民主党が「統一候補」として擁立することを知って、私の気持ちはいっぺんに委縮した。本気で都知事選を戦うようには見えなかったのだ。友人・知人たちにも、そんな受け止め方が広がっていた。宇都宮氏は過去2度の都知事選に出馬しているが、支持を広げられる候補者でないことは共通認識となっていた。

案の定、出口調査によると、小池氏は無党派層の54%、立憲支持層の29%、共産支持層の17%も取り込んでいた。一方宇都宮氏は、立憲支持層の49%、共産支持層の67%、無党派層からは15%しか得票できなかった(朝日新聞)。

はじめからわかっていたことだが、宇都宮氏は多くの都民にとって魅力がなかったのだ。選挙は政策の品評会ではない。魅力ある候補者が発する言葉でないと、都民に届かない。「立候補する権利」などとうそぶく宇都宮氏とその取り巻きは、都政変革を真剣に考えていたとは思えない。

この結果を「大健闘」(志位・共産党委員長)と評価する政党はもっと度し難い。

今回宇都宮氏を支援した立憲民主党、日本共産党、社会民主党の3党は、前回都知事選からこの4年間、都政について考えたことがあるのだろうか。東京は日本の首都、1400万人が暮らす大都市だ。いったい何をしていたのか。こんな野党しか持てない国民は不幸だと思う。

この3党は、都民にたいする説明責任をどう考えているのか。2016年都知事選で、鳥越俊太郎氏を候補者にしたのは、宇都宮氏では勝てないと判断したからではなかったのか。

今回宇都宮氏を統一候補とするのであれば、前回退けて、今回支援するその理由をこそ明らかにすべきだった。まっとうな理由があれば、選挙戦はもっと熱があったことだろう。

共産党は、2017年の都議会議員選挙を前に、2017年度の小池・東京都予算案に賛成した政党だ。「福祉、教育などいくつかの分野で、都民要求を反映した施策の一定の前進がみられること、今後さらなる施策の前進を期待できる答弁があった」(しんぶん赤旗2017年3月29日)とまで、小池都政を評価していたことをどう説明するのか。

それとも3党は「都民は黙って政党に従え」とでもいうのだろうか。それでは安倍政権、自民党と変わらない。日本国憲法は国民主権をうたっている。都政の主人公は都民なのだ。政党は都民に対する説明責任を果たす義務がある。

「野党共闘」は実現せず、3党による「統一候補」にとどまったことも、都知事選の大きな特徴だった。国民民主党は「自主投票」、立憲民主党や国民民主党が頼りにする連合東京は、「小池支持」だった。小池氏が代表の「希望の党」の顛末は何だったか。これらの事実も「野党共闘」の重大な判断材料となる。

山本太郎氏が都知事選出馬の記者会見で明らかにしたことも、「野党共闘」の内実を物語る。山本氏が都知事選に野党統一候補として立候補する条件として消費税率5%への引き下げを衆院選で共通公約にすることを求めたが、「だめだった」と言うのだ。

共産党は「一切関わっていない」と同党の小池書記局長は言ったが、逆進性で知られる消費税の減税を掲げることもできず、税制の在り方を問えない「野党共闘」とは何なのか。

「野党共闘」の政策は、魅力がない。税の問題を問えないだけでなく、核兵器禁止条約も野党の「共通政策」ではない。「核兵器の脅威は今日の差し迫った問題」という共産党が「共通政策」にするべく各党に提起したフシも見当たらない。

野党共闘は、憲法違反の安保法制反対という国民世論の高まりの中で、共産党の働きかけではじまった。ただ、共産党は安保法制廃止だけでなく、廃止のための「国民連合政府」をつくることを呼びかけた。廃止だけなら、閣外協力で可能なのだが。

小選挙区制での選挙協力は、大政党に有利で小政党に不利なことは、参院選や総選挙の「野党共闘」をみるだけでも明らかになる。「野党共闘」という名の選挙協力の当選者はほとんどが立憲民主党などで、共産党や社民党は0だ。選挙中は無所属の候補者が、当選すると立憲民主党などに鞍替えすることもまかり通っている。

野党側ではつねに大きな政党(政党の一本化)を目指す離合集散が繰り返される。小選挙区制導入の立役者・小沢一郎氏が自党を吸収するよ大きな政党の一員となるのも、小選挙区制だからなのだ。

「野党共闘」で多数派を形成した場合、選挙制度を改めるという合意もない。

「野党共闘」は、大きな政党を利するだけの「選挙互助会」に過ぎないのが実態なのだ。

「野党共闘」をめぐって共産党は、政策問題よりも政権入りを重視してきた。そのせいか、あちこちで共産党の「右傾化」が指摘されるようになってきたことも、「野党共闘」の特徴である。

そうではあるが、「野党共闘」が1つの区切りを迎えていることも確かなようだ。3月末、志位氏と民主党政権で副総理だった岡田克也氏が会談したが、その内容を共同通信は次のように報じ、多くの地方紙が掲載した。

「共産党の志位和夫委員長と無所属の岡田克也元副総理は31日、国会内で会談した。志位氏は自衛隊解消など他党と見解が異なる基本政策について「野党連合政権が実現しても持ち込まない」と説明。岡田氏は『自衛隊を違憲と言いながら、連合政権で認めるのは分かりにくい。もう少し柔軟に考えてほしい』と述べ、違憲論の再考を求めた。」

わかりやすく言えばこういうことだろう。岡田氏は、党と閣僚で自衛隊違憲、合憲を使い分けるのはわかりにくいので、共産党は党としても「自衛隊合憲」を打ち出すことが政権に参画できる条件だ、と要求した。

実は、政権の一員になれば、自衛隊「違憲、合憲」を使い分けることは共産党自身が表明していることである。

2017年10月、志位氏は2017年総選挙の前に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論会で、安倍晋三首相に問われてこう答えた。自衛隊について「党は違憲という立場を一貫して堅持するが、政府は合憲という立場を一定期間ずうっととることになる」。この志位発言は共産党としての態度表明で、いまも有効なのだ。

日本国憲法は第9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記している。1政党の都合で憲法解釈がどうにでもなるなら、日本の立憲政治は成り立たない。共産党が閣僚席から「自衛隊は合憲」と答弁すれば、同党への弔鐘が鳴り始めるだろう。

「野党共闘」を掲げる共産党・志位委員長が最も頼りにするのが小沢一郎氏だ。小沢氏は小選挙区制の下で、2大政党による政権交代を実現することを使命としている。

小沢氏はまた、「左」キラーでも有名だ。「左」を取り込むことで、自身の野望を達成することで知られている。いったんは廃案の危機を迎えた小選挙区制が、土井たか子衆院議長の「あっせん」によって成立にこぎつけた。小沢氏は社会党など8党・会派による細川政権樹立を主導し、批判を封じ込めるために土井氏を「議長」にしたとされる。

小沢氏とその側近・平野貞夫氏の対談を主にした『野党協力の深層 戦後共産党は、いかに大転換に至ったのか』という新書本がある。2016年暮れの発行だが、そこにはこう書かれている。「いまや象徴天皇を尊重する気持ちは、君主制へ復活の思いをつのらせる自民党の跳ね返り政治家より深いと言える」「憲法九条問題では、『日米安保体制と自衛隊』に対し『違憲』とすることを、党是としていた。現在は『凍結論』である」──。

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