4月は選挙が集中する。「統一地方選」前半戦投開票は4月9日、「統一地方選」後半戦と4つの衆院補選、参院補欠選挙は4月23日となる。この機会に、独裁者岸田首相とそれを支える自民党、公明党に対する国民の審判を突きつけたい。
国民に犠牲を強いる最たるものは、安全保障政策の大転換だ。敵基地攻撃能力の保有は「新しい戦前」、「戦争する国」になる、と不安視されている。
日本国憲法の下で、主権者国民や国会を無視して、敵基地攻撃能力の保有や米国内の2倍の値段でトマホークを爆買いし、軍事費をこれまでの2倍にするという異常さ。1月の日米首脳会談で米大統領が喜んだのも当然だ。岸田首相が気にかけたのは日本国民ではなく、米大統領と自民党最大派閥の安倍派である。
岸田首相はプーチン・ロシア大統領並みの独裁者だ。日本国憲法が、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原理としていることを考慮すれば、それを無視する岸田首相はきわめて悪質といえる。
「南西諸島防衛」を口実に、沖縄の島々が軍事要塞化されていく。この事態をどう見るか。台湾有事の発生確率は人によって様々だが、私は低いとみる。本質は、アメリカの「力」の低下を補い、日本の若者の血を流す、日米安保条約体制の双務化だ。
アメリカでは、「パックス・アメリカーナ」(アメリカの軍事力による「平和」=アメリカの世界支配)の終焉が言われて久しい。例えば、アメリカ外交に強い影響力を持つと言われる外交問題評議会のリチャード・N・ハース会長は「欧米の支配は終わる」とこう言っている。
「アジアが経済的台頭を続けるなか、最初はパックス・ブリタニカ、次にパックス・アメリカーナの下で世界を欧米世界が支配した2世紀は終わりに近づきつつある」(『フォーリン・アフェアーズ・リポート』2021年5月号)
「パックス・アメリカーナ」の後は、中国の支配ではなく、「多極化」の世界が来る、と大方は見ている。
このアメリカの「力」の低下を補う日米安保の双務化は、岸元首相以来の悲願でもある。
岸は言う。「日本の防衛という立場を強化するとともに、日米安保条約を対等のものにすべきだ」(原彬久編『岸信介証言録』)
それは安倍政権の下で、集団的自衛権の行使からはじまった。
安倍首相(当時)は、集団的自衛権を議論する国会で双務性について質問されこう答えている。「今回(集団的自衛権行使の)この新しい法制を行っていくことによって日米の同盟はより機能が強化されていく」(2015年5月27日衆議院、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会)
集団的自衛権行使のために安倍元首相が設置した安保法制懇の北岡伸一座長代理はこう言う。
「昔のように米国が圧倒的に強い状況ではない。(略)米国を何とか引きとめなくてはいけないのに、米軍が襲われても助けるのは嫌だという都合のいいことはできない」(毎日新聞2014年4月16日)
安倍氏は自身の著作『この国を守る決意』で、こうも言う。
「軍事同盟というのは″血の同盟″です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。(略)日米安保をより持続可能なものとし、双務性を高めるということは、具体的には集団的自衛権の行使だと思いますね」(扶桑社、2004年)
自己保身のためならなんでもやる岸田首相。ためらいはない。安倍元首相の意をくみ、戦後日本の在り方を根本から変えた。「防衛」と言えば響きはよいが、「戦争する国」にするのが岸田首相の狙いだ。
戦争は軍隊(米軍、自衛隊)だけで行うものではない。
岸田首相が敵基地攻撃能力保有を打ち出して以降、自衛官の中途退職者が急増しているという。浜田防衛相は国会で「継戦能力強化」と称して弾薬庫の大幅増を打ち出した。しかし、エネルギー自給率は10%程度、食料自給率は30%程度の日本が、「継戦能力強化」を言うのは滑稽だ。ロシアのウクライナ侵略戦争をみても、そもそもミサイル攻撃を防ぐのは難しい。国民の多くの犠牲は避けられない。
日本の将来を考える上で、ロシアのウクライナ侵略戦争をどう見るかは、極めて重要だ。
ロシアのウクライナ侵略戦争は、核兵器で全世界を威嚇して始まった。アメリカはウクライナへの武器支援を続けつつ、自国に波及しないように慎重だった。ここからわかることは、アメリカは他国のために核を使わない。
岸田首相らはアメリカの核に依存するというが、アメリカにそのつもりはない。地球上からすべての核を一掃しなければならないことこそ、ロシアのウクライナ侵略からの教訓だ。
昨年10月、国連総会でロシアによる一方的な「併合」を非難する決議が採択された。賛成143、反対5、棄権35だ。
国連憲章第2条4項には、こうある。「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」。
国際世論は侵略戦争を認めない。
ロシアの若者たちは、徴兵に抵抗して国外へ脱出した。日本が中国などを侵略し、アメリカとも戦って、学徒動員したころと比べても」隔世の感がする。時代はここまで変化した。
日米安保条約第10条には、こんな規定がある。「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する」
冷戦時代を引きずって、軍事ブロックを強化することよりも、国連の集団安全保障体制の強化が平和への道だ。
スリランカ人のウィシュマさんが名古屋入管で病死したが、岸田首相は人権意識もまるでない。岸田政権が国会に提出した入管難民法改正案は、2年前に廃案になったものと変わらないので、各地で市民らの反対デモが起きた。国際社会は、人権を最も重視しているというのに。
荒井首相秘書官や杉田総務政務官を更迭したものの、根底にあるのは差別意識という反人権意識だ。岸田首相が同性婚は「社会が変わってしまう」と言ったのも、人権意識の希薄さからきている。
「異次元の少子化対策」も軍事費を2倍にするので、財源がない。日本の住宅費や教育費の高さは世界有数だ。これこそ、人権問題ではないのか。
福島県の避難者はいまだ2万人を数え、2011年3月11日の「原子力緊急事態宣言」は解除されないままなのに、東京電力福島第一原発事故はなかったかのような原発推進政策に舵を切った。岸田首相が国民の安心・安全を考慮したフシは見当たらない。
統一教会の問題は、自民党政治を考えるうえで、必須のテーマだ。
統一教会の教祖・文鮮明は、「日本はイブ国家としてアダム国家の韓国に貢ぎ、捧げろ」と信者に教え込んできた。韓国にある統一教会の豪華な建物は。日本人信者から巻き上げたカネによる。「日本が統一教会の金づるだ」と、言われるゆえんだ。
統一協会は正体をかくして勧誘し、マインド・コントロール状態にして、日本国民のカネを巻き上げる。その統一教会のあり方自体が、「政治権力」を求める。日本国民を「食い物」にすることが「政治権力」を求めることになる。家族崩壊は日常茶飯事だ。「2世信者」の告発も後を絶たない。
岸田首相は自民党三役の1つ、政務調査会長に 萩生田衆院議員を据えた。萩生田氏は安倍派に属し、統一協会との関係が深いことで知られる。岸田首相が統一協会と自民党の関係をきれいにすることはあり得ない。
統一教会の被害者救済に力を尽くしている全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、「政治家の皆様へ統一教会との関係断絶を求める声明」をこの3月に公表した。 「統一教会やその関連団体から、秘書や事務所スタッフ、運動員等で統一教会関係者の協力(後援会結成などによる支援を含む)を得た事実、あるいはその打診を受けた事実の有無」を明らかにするよう求めている。
自民党に関する著作も多い中北功嗣・一橋大学大学院教授はこう指摘する。「統一協会との関係を問うことは20年間の自民党右派の政治の本質を問うことに等しい。統一教会問題は半ばロッキード事件、リクルート事件に匹敵する。この20年間の安倍元総理を中心の右派の政治が問われているのが今回の統一教会の問題。徹底的に解明することが重要だ」(2月18日TBSテレビ「報道特集」)
ロッキード事件とは、アメリカのロッキード社が航空機の売込みに関し、日本の政界に巨額のわいろを贈った1大事件。田中角栄元首相が逮捕された。
リクルート事件とはリクルート社が値上がり確実な未公開株を中曽根前首相、宮沢蔵相、竹下首相(いずれも事件発覚当時の肩書)らに贈った構造汚職事件。
つまり、こうした1大汚職事件と半ば共通するのが統一協会と自民党の癒着関係というのだ。安倍元首相が統一教会の広告塔の役割を果たすのも、日本国民を食い物にする統一教会の自民党に対する支援の見返りというわけだ。
これらのことが選挙の判断材料になることは言うまでもない。これらが「自民党政治」の根本問題である。