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星英雄:統一協会と自民党

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なぜ統一教会は自民党との関係強化を図るのか。自民党はなぜ統一教会と関係を絶てないのか。

統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の発言が、物議を醸している。韓鶴子総裁は統一教会の教祖・文鮮明の三番目の妻として知られる。

テレビや新聞などの各種メディアによれば、韓鶴子・統一教会総裁はこう言ったという。

「日本が、第2次世界大戦の戦犯国家だということ。原罪の国なのだ。ならば、被害を与えた国に賠償をしなければならない。日本は、韓国のおかげで経済の大復興をなし得たことを、忘れてはいけない。日本の政治家たちは、“統一教会”をどうしようとしている? 苦しめているではないか。この道を歩んでいる日本の政治はどうなる? 滅びるしかないだろ! 政治家たち、岸田に教育を受けに来いと伝えなさい」

要は、日本のカネを統一教会に貢げ、解散命令を出すな、岸田首相を呼びつけろ、と言っているのだ。

統一協会はホームページ上などで「韓総裁の発言の意図を全く無視し、韓国に送金をしなければならない、韓国への経済的な見返りの正当化などと、強引な解釈、すり替えをしています」などと弁解している。

しかし、日本の信者からカネを巻き上げることは、統一教会の教えそのものなのだ。

1980年代半ばから統一教会の被害者救済にとりくんできた全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称・全国弁連)の代表世話人山口広弁護士に提供された教祖・文鮮明の言葉を集めた『天聖経』という統一教会の本(コピー)がある。そこで教祖・文鮮明はこう教えている。

「韓半島は何かといえば、男でいえば生殖器です」「島国は女性の陰部と同じです」「日本はすべての物質を収集して、本然の夫であるアダム国家、韓国に捧げなければならないのです」と教えている。

つまり、統一教会が日本国民からカネを巻き上げるのは、統一教会の教義として当然のことなのだ。どんな手法を用いようが、日本国民にインチキな壷を法外な値段で売りつけようが、家庭崩壊を招く高額な献金を強制しようが、すべて統一教会の「教義」によって、正当化されるものなのだ。こんな、反社会的な集団の存続を許してはならない。

宗教法人法はその第81条で、「解散命令」を定めている。「裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。」

東京・多摩市では、統一教会が大問題になっている。統一教会が多摩市の広大な土地を購入していたことが発覚した。近くには、国士舘大学多摩キャンパスや都立永山高校もある。まるで、若者をターゲットにし、統一教会の拠点をつくろうとしているようだ。これに対し、市長や国士舘大学は建設中止などを申し入れた。

しかし、統一協会は「どこ吹く風」だ。あたかも所轄の文科省の解散命令請求はないかのような振る舞いだ。

市民たちは「統一教会の多摩進出反対」の声を上げ、「統一教会はNO!多摩市民連絡会」を結成した。しかし、統一協会を追及する怒りの多摩市民たちと自民党、公明党など一部の多摩市議会議員の間には深い断絶があるようだ。

2022年12月19日、多摩市議会議会運営委員会の結末は驚くべきものだった。市民の「旧統一教会に関する陳情が多摩市議会で採択されなかったのだ。

その日の多摩市議会議会運営委員会は市民からの「旧統一教会に関する陳情」が議題だった。陳情者の1人が発言した。いまだに続く、統一協会による国民の数々の被害を指摘したうえで、こう言った。

「多摩市議会でも、統一教会との関係を持たない決議をすることが、市民の信頼を得る」──。

だが、議会運営委員会の委員の対応は市民の意向とはちがっていた。市民の陳情を採択すべきと主張したのは日本共産党、ネット・社民の会などの3委員。新政会(自民党など)、公明党などの3委員は趣旨採択を主張して賛否同数だった。最後は公明党所属の議会運営委員長が趣旨採択を言明して、市民の陳情は採択されなかった。

この件は、後日談がある。本会議では逆転、採択されたのだ。

全国弁連は今年3月、「政治家の皆様へ 統一教会との関係断絶を求める声明」を出した。その中でこう言う。

「統一教会はかねてより、国会、地方議会を問わず政治家に働きかけ、無償での選挙協力の申出などにより関係性を築きあげ、政治への食い込みを図ってきました。
特に2007年秋以降2010年までの間、統一教会信者らが運営する販売会社に対する刑事摘発が相次ぎ、統一教会がその組織防衛のために政治家対策を強化した結果、国会議員、地方議会議員を問わず、政治家の方々が統一教会の集会や式典に出席し、祝辞を述べ、祝電を出すという行為が相次ぎました」

「政治家への食い込みは、組織防衛目的は勿論、政治家が各種イベントに参加することで統一教会の活動がお墨付きを得ているものとして信者獲得活動や献金獲得活動を進め易くし、更に統一教会にとって都合のよい政策を進めさせ、究極には『国家復帰』すなわち、統一教会を実質的に国教化し、日本を統一教会の支配下に置くといった目的があることが明白です」

なぜ統一協会は、電話かけなど無償の選挙活動をして自民党を支えるのだろうか。

自民党に関する著作も多い中北功嗣・一橋大学大学院教授(現・中央大学法学部教授)はこう指摘する。「統一協会との関係を問うことは20年間の自民党右派の政治の本質を問うことに等しい。統一教会問題は半ばロッキード事件、リクルート事件に匹敵する。この20年間の安倍元総理を中心の右派の政治が問われているのが今回の統一教会の問題。徹底的に解明することが重要だ」(2月18日TBSテレビ「報道特集」)

無償の選挙協力は、たとえば、安倍政権時代に、統一協会から世界平和統一家庭連合への名称変更となって現れた。統一教会が衆参選挙の際に、憲法改正などの政策に同調をもとめていることも明らかになっている。統一協会は「無償」こそ、自民党を操れると知っている。

それらが、ロッキード事件やリクルート事件などに匹敵すると中北教授は指摘するのだ。

自民党総裁でもある岸田首相は、統一協会を解散させるつもりはあるのかないのか。

岸田首相はアメリカと自民党最大派閥の安倍派の意向を汲めば自身の政権は安泰と考えているようだが、安倍派に対しての本音は見えにくい。支持率対策以上に、統一教会問題でどこまで踏み込むのか、不明だ。

昨年10月に、宗教法人法に基づく「質問権」を行使して調査を永岡文科大臣に指示したのは岸田首相だった。支持率低迷の最大要因は統一教会の問題だったからだ。一方、安倍派の実力者萩生田氏を自民党政調会長に据えたのも岸田首相だ。萩生田氏は統一教会との癒着が極めて強い人物だ。

統一教会問題は依然として岸田政権の最大の弱点のままだ。野党になった自民党が選挙に勝って安倍政権を誕生させた陰に、統一協会の「無償の選挙協力」がどう関わっていたのか。首相を退いたばかりの安倍元首相が天宙平和連合(UPF)にメッセージを寄せたのはなぜか。

統一教会を解散に追い込めるかどうかは、国民世論にかかっている。

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