沖縄のいま

星英雄:「慰霊の日」に思う

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6月23日は、沖縄の「慰霊の日」だった。

戦後78年、糸満市摩文仁の平和祈念公園では、沖縄全戦没者追悼式が開かれた。
「沖縄ではどの家族もみんな遺族です」と言った、宮城篤実・元嘉手納町長の言葉とともに、はじめて参加した2016年の「慰霊の日」を思い出す。

平和の礎の前には祈りを捧げる遺族らの姿が絶えなかった。

沖縄戦は足かけ15年にわたる日本の侵略戦争末期、米軍と日本軍の間で熾烈な戦闘が行われた。その結果、沖縄の人々の4人に1人が犠牲になった。沖縄は本土を守るための「捨て石」にされたといわれる。

摩文仁は沖縄戦の最後の激戦地だった。「軍隊は住民を守らない」ーーこれが沖縄戦の教訓だ。

高校3年生の平安名秋さんが平和の詩「今、平和は問いかける」を詠じた。

……

おばぁの涙は
摩文仁の丘に永遠に灯る平和の火は
今、私達に問いかける

平和とは何かを
私達に出来ることは何かを

……

玉城デニー沖縄県知事は「平和宣言」で、米軍基地が沖縄に集中している現状を告発した。「在日米軍専用施設面積の約70・3%が本県に集中し続け、航空機騒音をはじめ、水質や土壌等の環境汚染、航空機事故、米軍人・軍属等による事件・事故など、県民生活にさまざまな影響を生じさせている」。

米軍基地があるが故に、命が脅かされ、性暴力が横行している。

岸田首相は「基地負担の軽減に全力で取り組む」とは言ったものの、歴代自公政権の首相がつねに「辺野古が唯一」としたのと同様、米軍基地を減らす考えはない。

ただのパフォーマンスに過ぎない。

玉城知事と岸田首相は好対照の発言だった。

玉城知事は、安保3文書は「苛烈な地上戦の記憶と相まって、県民の間に大きな不安を生じさせており、対話による平和外交が求められている」と、沖縄の人々の気持ちを代弁した。

与那国島、石垣島、宮古島の人々は不安とともに、長距離ミサイル配備反対の運動を強めている。

岸田首相は「わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しい」などと自説を開陳した。岸田首相に沖縄の人々の「命と暮らし」を守る考えはない。

この間、唯一の支持率上昇要因の「広島G7サミット」も時の経過とともに批判にさらされている。

元広島市長の秋葉忠利さんは「核抑止力の必要性を説く文書に『広島』とつけたのは冒涜です」と憤る(朝日新聞6月21日付)。

バイデン米大統領の発言も、岸田首相の本音を浮き彫りにした。

バイデン米大統領は「私は3度にわたり日本の指導者と会い、説得した」などと発言した。アメリカのための日本の防衛費2%なのだ。

日本の防衛費増額については、トランプ前大統領など歴代米大統領が求めつづけてきた。トランプ前大統領は、「米軍を撤退させると脅せ」と言った。当時の大統領補佐官が著書で証言している。

敵基地攻撃用の米国製トマホークは400発買うとされているが、岸田政権は単価を明らかにしない。米国の武器輸出制度「有償軍事援助(FMS)」によるが、FMSは今年度、昨年度の4倍近くに跳ね上がっている。

岸田政権が国民受けを狙って打ち出す諸政策の財源不足はここに起因する。日本の主権者国民よりも、アメリカに従う岸田政権の立ち居振る舞いが露骨に現れている。

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