今日10月3日の朝日新聞は安倍元首相の「国葬」後の世論調査の結果を報じている。「国葬実施『評価せず』59%」「岸田内閣不支持50%」──。
「安倍国葬」とは何だったのか、改めて問いたい。
国民の「国葬反対!」の声に取り囲まれながら、岸田政権は安倍元首相の「国葬」を強行した。鮮明になったのは、批判者は国民にあらずという、安倍元首相と同様の偏狭な政治思想だ。
「安倍国葬」はG7(主要7ヵ国)から首脳は1人も参加せず、国内では自民党国会議員をはじめ、招待客の4割が不参加という貧弱なものだった。「安倍国葬」の理由として岸田首相が強調した「弔問外交」も顔合わせ程度のものでしかなかった。アメリカのハリス副大統領は米軍横田基地から入国し、アメリカと日本の主従関係を露骨に示した。
安倍晋三元首相の国葬をめぐり、世論が割れている背景などについて、海外メディアも活発に報道した。アメリカのAP通信は「与党が超保守的な旧統一教会と癒着していることが、葬儀への反対を大きくしている」と報道するなど海外メディアは国葬に反対する日本の動きを伝えた。
7月の参院選後は「黄金の3年間」になる、と言い出したのは政府・自民党だった。「黄金の3年間」とは、岸田内閣と自民党が自由にふるまえるという意味だ。安倍政権が「選挙独裁」と評されたように、憲法改悪も、軍事費増大も好き勝手にできるという意味だ。
しかしこの間、それとは真逆のことが起きた。国葬反対の世論はおそらく誰もの予想を超えて広がった。「世論が割れている」状態をはるかに超えて、どのメディアの世論調査でも圧倒的多数が安倍元首相の国葬に反対した。それとともに、内閣支持率も急降下した。
政界には、内閣支持率と自民党支持率を合わせて50%を割れば、政権運営はやがて行き詰まるという見方がある。毎日新聞の9月の世論調査では、内閣支持率は29%、自民党支持率は23%。2つ合わせて52%しかない。
ついには、安倍元首相の国葬は、自民党という政党を弔う儀式になるだろうという見方が出てきた。作家の赤坂真理さんが朝日新聞9月20日付で語った。
国葬は民主主義の世の中には合わない。日本では日本国憲法の施行とともに、国葬令は効力を失った。戦前の国葬は天皇の権威付けと侵略戦争に利用された。現行の日本国憲法は国葬を想定していないので、法律もない。「国葬」が日本国憲法14条「法の下の平等」や憲法19条「思想及び良心の自由」に反することも確かなことだ。
イギリスのエリザベス女王の国葬が取りざたされたが、これもかつての大英帝国の名残に過ぎない。インドではエリザベス女王の王冠の宝石を返せ、イギリスの略奪の証しだと批判が起き、オーストラリアの国会議員はエリザベス女王は植民者だと批判した。
「安倍国葬」を批判する国民の声に耳を傾けない点で岸田首相は安倍元首相と同じ、批判者は国民にあらず、という態度だ。
安倍元首相は、たとえば、2017年の秋葉原での演説の時、ヤジを飛ばす日本国民を排除した。2019年の参院選では、札幌でも批判のヤジを排除した。しかし、札幌地裁は排除された男性勝訴の判決を下した。
衆院調査局の調べでは、安倍元首相は桜を見る会の問題だけでも118回、虚偽答弁をしている。国民主権を定めた日本国憲法に対する挑戦だ。汚職まみれの東京オリンピックは、安倍元首相の「アンダー・コントロール」の言葉から始まった。
福島県の地元紙・福島民報の世論調査では「安倍国葬」に「反対」が66・3%、年代別では18~19歳の「反対」が100%だった。原発事故で帰るべき故郷を失った福島県民の「安倍国葬」への評価に他ならない。
プーチン・ロシア大統領を盟友扱いし。27回も首脳会談をかさねたが、「北方領土」は返ってこない。拉致問題も解決しない。アベノミクスの「大胆な金融緩和」は、岸田政権に引き継がれ、円安は物価高騰と賃金が上がらない原因となっている。
統一協会はいま「解散」の危機に直面している。前川喜平元文部科学事務次官は宗教法人法に基づく解散命令請求は「できるし、すべきだ」と明言し、全国霊感商法対策弁護士連絡会は宗教法人法に基づく解散命令の請求を決めた。
しかし、まだ解明しなければならない点が多々あることも事実だ。一番の問題は、第2次安倍政権時代に政府・自民党と統一教会との癒着が深まったことだ。この時期に、統一教会の名称変更も実現した。「安倍国葬」で友人代表の挨拶をした菅前首相にも、統一協会との新たな癒着が浮上した。菅氏は自民党の選挙通として知られる。
統一協会はしぶとい。ウソをついても平気だ。霊感商法や解怨と称して日本国民からカネを巻き上げるカルト集団、反社会的集団だ。日本をエバ国家とみなして、日本からカネを巻き上げることを正当化する教義の集団だ。(「山口広:被害者を守り統一教会と闘って35年 利用し、利用される関係の安倍元首相」参照)
自民党は選挙に勝つために、日本国民を食い物にする統一協会と手を組んだ。きっぱりと手を切れない理由がここにある。これほど、反国民的なことはない。
日本国憲法は「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理」と宣言している。
国民、国民主権をないがしろにする自民党政治を権力の座にとどまらせてはいけない。日本国民を食い物にする統一協会を、日本社会から掃討すべきだ。