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星英雄:「アベ抜き、安倍政治」の継続──安倍首相のはかりごと

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「アベ抜き、安倍政治の継続」──安倍晋三首相の思惑通りの展開になりそうだ。でたらめのかぎりをつくした安倍政権の後継は、安倍政権の番頭役、菅義偉官房長官というのだから、あいた口がふさがらない。「病気」を口実にした「退陣劇」は「安倍政治」を続けるために仕組まれた安倍首相の陰謀だったのだ。

安倍首相は次の首相をも縛っている。辞任表明後の安倍首相とトランプ米大統領との電話会談。トランプ氏は安倍首相を「日本の歴史のなかで最も偉大な首相だ」と評価したと各紙が報じた。

「アメリカファースト」「自分ファースト」が看板のトランプ大統領が「偉大な首相」と安倍首相をほめそやすとはどういうことか。

沖縄タイムス9月1日付は、安倍首相がトランプ大統領に「後任も移設を推進する」と語ったことを明らかにしている。つまり、後継首相も辺野古新基地建設を強行する。そんな約束をしたことになる。

沖縄は新型コロナウイルス感染者が広がっている。日米安保条約で米軍基地が置かれ、日米安保条約に基づく地位協定で米兵は入国審査も検疫もフリーパスだ。

沖縄県はクラスターが発生している普天間飛行場とキャンプハンセンを閉鎖し、感染拡大防止の徹底を求めたりしたが、らちがあかない。米兵が基地の外で夜の繁華街を楽しんでいる、との情報も絶えない。

米軍基地が集中している沖縄は、米軍によって朝鮮戦争時はマラリア、性感染症、ベトナム戦争時は風疹が広がった歴史もある。基地が原因の事件、事故も日常茶飯事だ。

それなのになお、辺野古新基地を900憶円以上の血税を投入してアメリカに差し出す。さらに、米国製兵器の「爆買い」に走った。アメリカの要求に従って、憲法違反の集団的自衛権を行使できるようにし、アメリカの軍事戦略の変化に応じて敵基地攻撃能力をそなえようとする。トランプ大統領が安倍首相を絶賛するのもアメリカに奉仕しているから。安倍首相が「トランプのポチ」と言われるのも当然ではないか。

安倍首相辞任表明の内幕を自民党の稲田朋美幹事長代行が明かした。稲田氏は自民党幹事長だった安倍氏に見出されて衆院議員になり、その後も安倍氏に抜擢されて今日がある。

内幕は共同通信が配信し、いくつかの地方紙が掲載した。それによると、稲田氏は8月29日の読売テレビ番組でこう語った。安倍首相は「これから人事もあるし、国会もある。いろいろと乗り切るためには余力を残して辞任するのが一番だ」と。安倍首相は「薬が効いてかなり良くなってきた」と説明したことも稲田氏は明かした。

政策・政治的に行き詰った安倍首相が、安倍政治を継続するには、任期を残している「今しかない」というわけだ。自民党党則6条は緊急時の対応として、国会議員と都道府県連代表が「党大会に代わる両院議員総会」で投票し、選出できると定めている。

これを利用したのだ。自民党総裁選は原則、党員投票を実施するが、「緊急時」は別だという。辞任表明で、その緊急時を意識的に作り出したのだ。「薬が効いてかなり良くなってきた」ので、代理もおかず、首相を続けている。なにが緊急なものか。口実の「病気」を真に受けた野党もマスコミもどうかしているのではないか。

問題は菅官房長官だ。菅氏は「霞が関(官僚)を掌握している」「官邸政治の中心にいる」と評されてきた。「全体の奉仕者」であるはずの官僚(公務員)を屈服させ、安倍政権に奉仕するよう仕向けてきた張本人ともいえる。安倍政権は「権力の私物化」によって事件を引き起こし、それを隠ぺいしてきた。森友・加計疑惑、桜を見る会の問題や黒川検事長の定年延長問題、河合法相夫妻の買収事件などみなそうだ。権力を私物化し、人事で官僚を屈服させ、公文書の破棄、改ざん等々日本国憲法の「国民主権」をないがしろにしてきたのが安倍政治。菅氏はその中枢を担ってきた。

原点はNHK人事にあると、菅氏は著書『政治家の覚悟 官僚を動かせ』で語っている。人事権は「伝家の宝刀」だと、NHK担当課長を更迭したことを自賛している。「組織の意思が統一され、一丸となってNHK改革に取り組むことができた」と。

同書では、東日本大震災時の民主党政権は議事録を残していなかったと批判をしてこうも言っている。「最も基本的な資料」の議事録を作成しなかったことは「国民への背信行為」と。

安倍首相と菅官房長官がやってきたことこそ文字通り「国民への背信行為」なのだが、彼らは選挙で勝てば何をやってもよい、という考えの持ち主なのだろう。憲法を踏みにじって恥じない。

安倍政治は、自民党員の声にさえ耳を傾けることはできないほどに、行き詰っていた。それが安倍首相の陰謀劇の動機となったのではないか。

2000年のことだった。小渕首相が倒れた時、当時の自民党有力5議員が後継首相は森喜朗氏と決めた。「密室政治」の批判を呼んだ。今回の両院議員総会による選出方法に通じるものがある。

果たして森内閣は、1年ほどしか続かない、短命で終わった。

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