沖縄のいま

星英雄:辺野古新基地を阻止してこそ豊な沖縄になる 沖縄の未来のために

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9月16日、日曜日午前8時過ぎ。米軍嘉手納基地の近く、読谷村の入り口の交差点で、「誇りある豊かさを 玉城デニー」ののぼりを立て、道行く人や車に手を振る1人の男性に出会った。「周りは危機意識が薄い。これ以上基地を造ってどうするの。僕らは後世に恥じないように、辺野古新基地を造らないという選択肢を示している。選択するのはあなたたちだ、そんな思いですね」。短い立ち話、男はこう言った。県知事選は次第に激しさを増している。

この日の午後、県庁前での佐喜真候補の演説会を聞いた。「小泉新次郎来る」のチラシで人を呼ぶ、名護市長選挙のノリだ。

宣伝カーの周りでは「国民の暮らし最優先」の法定ビラが配られた。佐喜真候補者、菅官房長官、小泉議員がそろって力説したのは若者受けを狙った「携帯料金の値下げ」だ。まるで、「スタバの誘致」で若者を誘導した名護市長選挙みたい。若者を柳の下のドジョウに見立てる、佐喜真陣営のえげつないこと。

しかしこれは、選挙めあてのごまかしだ。誰もが携帯料金の値下げを望んでいるが、もともと民間企業の携帯料金を政府が決めることはできない。若者だけでなく、携帯の契約の仕組み、料金体系に広範な国民の批判があり、それが事態の改善に向かう原動力だ。もし、政治家や政府が決めることができるというなら、これまで高い携帯料金を県民・国民に負担させてきた政府の責任こそ問われなければならないはずだ。

若者よ、だまされるな。

時代は変わった

沖縄の新聞、琉球新報も沖縄タイムスも、知事選の争点は「辺野古新基地建設の是非」だと報じている。同時に、佐喜真候補が新基地建設の是非に触れないことも指摘している。

玉城デニー候補は「辺野古新基地を造らせない」と、態度を明確にしている。一方、佐喜真候補は「態度を明らかにしていない」と指摘されている。しかし、佐喜真候補が「辺野古新基地建設容認」の立場であることは明白ではないのか。

安倍首相は「辺野古移設が唯一の解決策」と言い続け辺野古新基地建設を強行している。自民党丸抱え、しかも辺野古埋立を承認した仲井真元知事の支援を受けて、どうして辺野古新基地建設に反対することができようか。

琉球新報7月31日付け2面

復帰以来の「基地のない島」への1歩

そもそも、辺野古新基地を造って、沖縄のどんな発展があるというのだろうか。その考えこそ、前世紀の遺物というべき、時代錯誤ではないか。すでに時代は変わったのだ。

沖縄の自立した経済発展の積み重ねがあり、多くの県民が「米軍基地こそ沖縄経済の最大の阻害要因」と、実感として感じられるようになった。そのことは、「沖県民総所得に占める軍関係の受取り」の推移をみれば明らかだ。日本復帰の1972年(昭和47年)は15・5%も占めていたが、2015年にはわずか5・3%にまで低下した。この事実は、沖縄経済の変化を雄弁に物語る。

まさに、時代が変わったのだ。時代が変わったからこそ「オール沖縄」が成立した。翁長知事も一部経済界も、いわば「安心して新基地建設反対」を主張できるようになった。時代の変化にいち早く対応した人々こそ、オール沖縄の保守系の人たちなのだ。

「基地のない平和の島」は1972年の日本復帰以来の沖縄の悲願だ。それは「建議書」にうたわれている。

「復帰措置に関する建議書」は、本土復帰に際して沖縄県の声を日本土政府と返還協定批准国会(沖縄国会)に手渡すために作成された建議書だ。当時の屋良主席は、1971年11月「建議書」を持って上京したが、自民党はこれを待たずに衆院で沖縄返還協定を強行採決した。

「建議書」は沖縄県民が「従来通りの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰」を強く望んでいること、「沖縄開発」についても、軍事基地は「沖縄の経済社会に異常な影響を与え」ていることを指摘している。そのうえで「建議書」は、「基地のもつ非人間的、頽廃的性格がいく多の社会的問題を惹起して」いることも日本全体に訴えている。

沖縄の未来は、辺野古新基地建設を阻止してこそ。経済発展も、人間らしさもそこにかかっている。辺野古新基地建設を阻止することは、日本復帰以来の悲願「基地のない平和の島」への第1歩でもある。

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