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星英雄:平和運動と庶民に寄り添った50年──写真家・藤田観龍の『写真報道50年の軌跡』

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当ウェブサイト「沖縄を考える」の発起人の1人でもある藤田観龍氏が写真集を出版した。『写真報道50年の軌跡 藤田観龍(Fujita-Kanryu)撮影』(本の泉社)だ。日本社会が直面する課題に向き合ってきた記録でもある。みなさんにお薦めしたいと思う。

新聞報道に写真はつきものだが、ともすれば添え物と誤解されがちだ。実はそうではない。事件の場合は写真が欠かせない。いや、写真が大きくものを言うケースが多々ある。

1985年8月12日、日本航空123便が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落し、520名が死亡した。世界の航空機史上最悪の事故と言われる。生存者はたった4人だった。この時、藤田観龍が写した生々しい現場写真が『写真報道50年の軌跡』に収められている。

なかでも、生存者の1人川上慶子が自衛隊ヘリで救出される場面を撮影したのは、現場に駆け付けた数多くのカメラマンの中で、藤田1人だった。スクープ写真である。ゆえに、日航機墜落事故を特集するテレビ番組でも、藤田のこの写真が使われた。

藤田の「写真報道50年」は現場を踏み、平和運動と庶民に寄り添ってきた50年といえる。米原子力潜水艦寄港に反対するうたごえ祭典の写真は懐かしい。記憶が新しい原発や安保法制反対の運動。抗議する人々は躍動している。川崎公害病患者、集団就職の青年たち、災害現場の被災者らの写真も。とくに阪神淡路大震災では当日早くに現地入りし、地震当日の惨状と呆然とする人々のありさまをとらえている。

そしてヘイトスピーチを許さない在日コリアンの人々と日本人の連帯した闘い。沖縄の祖国復帰運動から辺野古新基地建設に抗議行動する人々も活写。ロッキード事件で逮捕された田中角栄元首相の姿もキャッチした。

異彩を放っているのが著名人の顔だ。私が愛読した作家、松本清張のほか、黒柳徹子、栗原小巻ら113人。現役も故人も表情が生きている。

自分が生きてきた時代を写真で振り返ることができる1冊だ。

『写真報道50年の軌跡 藤田観龍(Fujita-Kanryu)撮影』(本の泉社)はA4判上製・288ページ、税込定価4000円。購入ご希望の方は、メールアドレスfkphoto4227@ybb.ne.jp(藤田観龍)まで。

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